前に戻る 列王紀略上 🔝

 

〘616㌻〙

第1章

1 爰こゝにダビデ王わう年邁としすすみて老おい寢衣よぎを衣きするも溫あたたまらざりければ 2 其その臣僕しもべ等ら彼かれにいひけるは王わうわが主しゆのために一人ひとりの若わかき處女をとめを求もとめしめて之これをして王わうのまへにたちて王わうの左右ともとなり汝なんぢの懷ふところに臥ふして王わうわが主しゆを暖󠄃あたためしめんと 3 彼等かれら乃すなはちイスラエルの四方よもの境さかひに美うつくしき童女をとめを求もとめてシユナミ人びとアビシヤグを得えて之これを王わうに携つれきたれり 4 此これ童女をとめ甚はなはだ美うつくしくして王わうの左右ともとなり王わうに事つかへたり然されど王わう之これと交󠄄まじはらざりき

5 時ときにハギテの子こアドニヤ自みづから高たかくし我われは王わうとならんと言いひて己おのれのために戰車いくさぐるまと騎兵きへいおよび自己おのれのまへに驅かける者もの五十人にんを備そなへたり 6 其その父󠄃ちゝは彼かれが生うまれてより已來このかた汝なんぢ何故なにゆゑに然しかするやと言いひてかれを痛いたましめし事ことなかりきアドニヤも亦また容貌かたちの甚はなはだ美よき者ものにてアブサロムの次󠄄つぎに生うまれたり 7 彼かれゼルヤの子こヨアブおよび祭司さいしアビヤタルと商議かたらひしかば彼等かれら之これに從したがひゆきて助たすけたり 8 されど祭司さいしザドクとヱホヤダの子こベナヤと預言者よげんしやナタンおよびシメイとレイならびにダビデに屬ぞくしたる勇󠄃士ゆうしはアドニヤに與くみせざりき 9 アドニヤ、エンロゲルの近󠄃邊󠄎ほとりなるゾヘレテの石いしの傍かたはらにて羊ひつじと牛うしと肥こえたる畜ものを宰ほふりて王わうの子こなる己おのれの兄弟きやうだいおよび王わうの臣僕けらいなるユダの人ひとを盡こと〴〵く請󠄃まねけり 10 されども預言者よげんしやナタンとベナヤと勇󠄃士ゆうしとおのれの兄弟きやうだいソロモンとをば招まねかざりき

11 爰こゝにナタン、ソロモンの母はゝバテシバに語かたりていひけるは汝なんぢハギテの子こアドニヤが王わうとなれるを聞きかざるかしかるにわれらの主しゆダビデはこれを知しらざるなり 12 されば請󠄃こふ來きたれ我われ汝なんぢに計はかりごとを授さづけて汝なんぢをして己おのれの生命いのちと汝なんぢの子こソロモンの生命いのちを救すくはしめん 13 汝なんぢ往󠄃ゆきてダビデ王わうの所󠄃ところに入いり之これにいへ王わうわが主しゆよ汝なんぢは婢しもめに誓ちかひて汝なんぢの子こソロモンは我われに繼ついで王わうとなりわが位くらゐに坐ざせんといひたまひしにあらずや然しかるにアドニヤ何故なにゆゑに王わうとなれるやと
 616㌻ 
14 われまた汝なんぢが尙なほ其處そこにて王わうと語ものいふ時うちに汝なんぢに次󠄄つづいて入いり汝なんぢの言ことばを證かたうすべしと

15 是こゝにおいてバテシバ寢室ねやに入いりて王わうの所󠄃ところにいたるに王わうは甚はなはだ老おいてシユナミ人びとアビシヤグ王わうに事つかへ居ゐたり 16 バテシバ躬󠄂みを鞠かがめ王わうを拜はいす王わういふ何なになるや 17 かれ王わうにいひけるはわが主しゆ汝なんぢは汝なんぢの神かみヱホバを指さして婢しもめに汝なんぢの子こソロモンは我われに繼ついで王わうとなりわが位くらゐに坐ざせんと誓ちかひたまへり〘473㌻〙 18 しかるに視みよ今いまアドニヤ王わうとなれり而しかして王わうわが主しゆ汝なんぢは知しりたまはず 19 彼かれは牛うしと肥こえたる畜ものと羊ひつじを饒おほく宰ほふりて王わうの諸子みこたちおよび祭司さいしアビヤタルと軍ぐんの長かしらヨアブを招まねけりされど汝なんぢの僕しもべソロモンをば招まねかざりき 20 汝なんぢ王わうわが主しゆよイスラエルの目め皆みな汝なんぢに注そゝぎ汝なんぢが彼等かれらに誰たが汝なんぢに繼ついで王わうわが主しゆの位くらゐに坐ざすべきを吿つぐるを望󠄇のぞむ 21 王わうわが主しゆの其その父󠄃祖せんぞと共ともに寢ねむりたまはん時ときに我われとわが子こソロモンは罪人ざいにんと見做みなさるるにいたらんと

22 バテシバ尙なほ王わうと語ものいふうちに視みよ預言者よげんしやナタンも亦また入いりきたりければ 23 人々ひと〴〵王わうに吿つげて預言者よげんしやナタン此こゝにありと曰いふ彼かれ王わうのまへに入いり地ちに伏ふして王わうを拜はいせり 24 しかしてナタンいひけるは王わうわが主しゆ汝なんぢはアドニヤ我われに繼ついで王わうとなりわが位くらゐに坐ざすべしといひたまひしや 25 彼かれは今日こんにち下くだりて牛うしと肥こえたる畜ものと羊ひつじを饒おほく宰ほふりて王わうの諸子みこたちと軍ぐんの長かしら等たちと祭司さいしアビヤタルを招まねけりしかして彼等かれらはアドニヤのまへに飮のみ食󠄃くひしてアドニヤ王わう壽いのちながかれと言いふ 26 されど汝なんぢの僕しもべなる我われと祭司さいしザドクとヱホヤダの子こベナヤと汝なんぢの僕しもべソロモンとは彼かれ請󠄃まねかざるなり 27 此事このことは王わうわが主しゆの爲なしたまふ所󠄃ところなるかしかるに汝なんぢ誰たが汝なんぢに繼ついで王わうわが主しゆの位くらゐに坐ざすべきを僕しもべに知しらせたまはざるなりと

28 ダビデ王わう答こたへていふバテシバをわが許もとに召めせと彼かれ乃すなはち王わうのまへに入いりて王わうのまへにたつに 29 王わう誓ちかひていひけるはわが生命いのちを諸もろ〳〵の艱難かんなんの中うちに救すくひたまひしヱホバは活いく 30 我わがイスラエルの神かみヱホバを指さして誓ちかひて汝なんぢの子こソロモン我われに繼ついで王わうとなり我われに代かはりてわが位くらゐに坐ざすべしといひしごとくに我われ今日こんにち爲なすべしと
 617㌻ 
31 是こゝにおいてバテシバ躬󠄂みを鞠かがめ地ちに伏ふして王わうを拜はいし願ねがはくはわが主しゆダビデ王わう長久とこしなへに生いきながらへたまへといふ

32 ダビデ王わういひけるはわが許もとに祭司さいしザドクと預言者よげんしやナタンおよびヱホヤダの子こベナヤを召めせと彼等かれら乃すなはち王わうのまへに來きたる 33 王わう彼等かれらにいひけるは汝等なんぢらの主しゆの臣僕けらいを伴󠄃ともなひわが子こソロモンをわが身みの騾むまに乘のせ彼かれをギホンに導󠄃みちびき下くだり 34 彼處かしこにて祭司さいしザドクと預言者よげんしやナタンは彼かれに膏あぶらをそそぎてイスラエルの上うへに王わうと爲なすべししかして汝なんぢら喇叭らつぱを吹ふきてソロモン王わう壽いのちながかれと言いへ 35 かくして汝なんぢら彼かれに隨したがひて上のぼり來きたるべし彼かれは來きたりてわが位くらゐに坐ざし我われに代かはりて王わうとなるべし我われ彼かれを立たててイスラエルとユダの上うへに主君きみとなせりと 36 ヱホヤダの子こベナヤ王わうに對こたへていひけるはアメンねがはくは王わうわが主しゆの神かみヱホバ然しか言いひたまはんことを〘474㌻〙 37 ねがはくはヱホバ王わうわが主しゆとともに在いませしごとくソロモンとともに在いましてその位くらゐをわが主しゆダビデ王わうの位くらゐよりも大おほいならしめたまはんことを

38 斯かくて祭司さいしザドクと預言者よげんしやナタンおよびヱホヤダの子こベナヤ並ならびにケレテ人びととペレテ人びと下くだりソロモンをダビデ王わうの騾むまに乘のせて之これをギホンに導󠄃みちびきいたれり 39 しかして祭司さいしザドク幕屋まくやの中うちより膏あぶらの角つのを取とりてソロモンに膏あぶらそそげりかくて喇叭らつぱを吹ふきならし 40 民たみみなソロモン王わう壽いのちながかれと言いへり民たみみなかれに隨したがひ上のぼりて笛ふえを吹ふき大おほいに喜よろこび祝いはひ地ちはかれらの聲こゑにて裂さけたり

41 アドニヤおよび彼かれとともに居ゐたる賓客きやく其その食󠄃しよくを終󠄃をへたる時ときに皆みなこれを聞きけりヨアブ喇叭らつぱの聲こゑを聞きゝていひけるは城󠄃邑まちの中うちの聲音󠄃こゑ何なんぞ喧囂かまびすしきやと 42 彼かれが言いひをる間うちに視みよ祭司さいしアビヤタルの子こヨナタン來きたるアドニヤ彼かれにいひけるは入いれよ汝なんぢは勇󠄃ゆうある人ひとなり嘉よき音󠄃おとづれを持もちきたれるならん 43 ヨナタン答こたへてアドニヤにいひけるは誠󠄃まことにわが主しゆダビデ王わうソロモンを王わうとなしたまへり
 618㌻ 
44 王わう祭司さいしザドクと預言者よげんしやナタンおよびヱホヤダの子こベナヤ並ならびにケレテ人びととペレテ人びとをソロモンとともに遣󠄃つかはしたまふ即すなはち彼等かれらはソロモンを王わうの騾むまに乘のせてゆき 45 祭司さいしザドクと預言よげん者しやナタン、ギホンにて彼かれに膏あぶらをそそぎて王わうとなせり而しかして彼等かれら其處そこより歡よろこびて上のぼるが故ゆゑに城󠄃邑まちは諠囂かまびすし汝なんぢらが聞きける聲音󠄃こゑは是これなり 46 又󠄂またソロモン國くにの位くらゐに坐ざし 47 且かつ王わうの臣僕けらい來きたりてわれらの主しゆダビデ王わうに祝いはひを陳のべて願ねがはくは汝なんぢの神かみソロモンの名なを汝なんぢの名なよりも美よくし其その位くらゐを汝なんぢの位くらゐよりも大おほいたらしめたまへと言いへりしかして王わうは牀とこの上うへにて拜はいせり 48 王わうまた斯かくいへりイスラエルの神かみヱホバはほむべきかなヱホバ今日こんにちわが位くらゐに坐ざする者ものを與あたへたまひてわが目め亦またこれを見みるなりと

49 アドニヤとともにある賓客きやく皆みな驚愕󠄂おどろき起󠄃たちて各おの〳〵其その途󠄃みちに去さりゆけり 50 茲こゝにアドニヤ、ソロモンの面かほを恐おそれ起󠄃たちて往󠄃ゆき壇だんの角つのを執とらへたり 51 或ある人ひとソロモンに吿つげていふアドニヤ、ソロモン王わうを畏おそる彼かれ壇だんの角つのを執とらへて願ねがはくはソロモン王わう今日けふ我われに劍かたなをもて僕しもべを殺ころさじと誓ちかひ給たまへと言いひたりと 52 ソロモンいひけるは彼かれもし善ぜん人にんとなるならば其その髮かみの毛け一ひとすぢも地ちにおちざるべし然されど彼かれの中うちに惡あくの見みゆるあらば死しなしむべしと 53 ソロモン王わう乃すなはち人ひとを遣󠄃やりて彼かれを壇だんより携たづさへ下くだらしむ彼かれ來きたりてソロモン王わうを拜はいしければソロモン彼かれに汝なんぢの家いへに往󠄃ゆけといへり〘475㌻〙

第2章

1 ダビデ死しぬる日ひ近󠄃ちかよりければ其その子こソロモンに命めいじていふ 2 我われは世人よの皆みな往󠄃ゆく途󠄃みちに往󠄃ゆかんとす汝なんぢは强つよく丈󠄃夫をとこのごとく爲なれ 3 汝なんぢの神かみヱホバの職守つとめを守まもり其その道󠄃みちに步行あゆみ其その法憲のりと其その誡命いましめと其その律例さだめと其その證言あかしとをモーセの律法おきてに錄しるされたるごとく守まもるべし然しからば汝なんぢ凡すべて汝なんぢの爲なすところと凡すべて汝なんぢの向むかふところにて榮さかゆべし 4 又󠄂またヱホバは其その甞さきに我われの事ことに付つきて語かたりて若もし汝なんぢの子等こら其その道󠄃みちを愼つゝしみ心こゝろを盡つくし精神せいしんを盡つくして眞󠄃實まことをもて吾わが前󠄃まへに步あゆまばイスラエルの位くらゐに上のぼる人ひと汝なんぢに缺かくることなかるべしと言いひたまひし言ことばを堅かたうしたまはん 5 又󠄂また汝なんぢはゼルヤの子こヨアブが我われに爲なしたる事こと即すなはち彼かれがイスラエルの二人ふたりの軍ぐんの長かしらネルの子こアブネルとヱテルの子こアマサに爲なしたる事ことを知しる彼かれ此この二人ふたりを切きり殺ころし太平󠄃たいへいの時ときに戰いくさの血ちを流ながし戰いくさの血ちを己おのれの腰󠄃こしの周󠄃圍󠄃まはりの帶おびと其その足あしの履くつに染つけたり
 619㌻ 
6 故ゆゑに汝なんぢの智慧󠄄ちゑにしたがひて事ことを爲なし其その白髮しらがを安然やすらかに墓はかに下くだらしむるなかれ 7 但たゞしギレアデ人びとバルジライの子等こらには恩惠めぐみを施ほどこし彼等かれらをして汝なんぢの席せきにて食󠄃くらふ者ものの中うちにあらしめよ彼等かれらはわが汝なんぢの兄弟きやうだいアブサロムの面かほを避󠄃さけて逃󠄄にげし時とき我われに就つきたるなり 8 視みよ又󠄂またバホリムのベニヤミン人びとゲラの子こシメイ汝なんぢとともに在あり彼かれはわがマナハイムに往󠄃ゆきし時とき勵はげしき詛のろひ言ことばをもて我われを詛のろへり然しかれども彼かれヨルダンに下くだりて我われを迎󠄃むかへたれば我われヱホバを指さして誓ちかひて我われ劍かたなをもて汝なんぢを殺ころさじといへり 9 然しかりといへども彼かれを辜つみなき者ものとする勿なかれ汝なんぢは智慧󠄄ちゑある人ひとなれば彼かれに爲なすべき事ことを知しるなり血ちを流ながして其その白髮しらがを墓はかに下くだすべしと

10 斯かくてダビデは其その父󠄃祖せんぞと偕ともに寢ねむりてダビデの城󠄃まちに葬はうむらる 11 ダビデのイスラエルに王わうたりし日ひは四十年ねんなりき即すなはちヘブロンにて王わうたりし事こと七年ねんエルサレムにて王わうたりし事こと三十三年ねん 12 ソロモン其その父󠄃ちゝダビデの位くらゐに坐ざし其その國くには堅固かたく定さだまりぬ

13 爰こゝにハギテの子こアドニヤ、ソロモンの母はゝバテシバの所󠄃ところに來きたりければバテシバいひけるは汝なんぢは平󠄃穩おだやかなる事ことのために來きたるや彼かれいふ平󠄃穩おだやかたる事ことのためなり 14 彼かれ又󠄂またいふ我われは汝なんぢに言まをさんとする事ことありとバテシバいふ言まうされよ 15 かれいひけるは汝なんぢの知しるごとく國くには我われの有󠄃ものにしてイスラエル皆みな其その面かほを我われに向むけて王わうとなさんと爲せりしかるに國くには轉うつりてわが兄弟きやうだいの有󠄃ものとなれり其その彼かれの有󠄃ものとなれるはヱホバより出いでたるなり 16 今いま我われ一ひとつの願ねがひを汝なんぢに求もとむ請󠄃こふわが面かほを黜しりぞくるなかれバテシバかれにいひけるは言まをされよ
 620㌻ 
17 彼かれいひけるは請󠄃こふソロモン王わうに言いひて彼かれをしてシエナミ人びとアビシヤグを我われに與あたへて妻つまとなさしめよ彼かれは汝なんぢの面かほを黜しりぞけざるべければなり〘476㌻〙 18 バテシバいふ善よし我われ汝なんぢのために王わうに言いはんと

19 かくてバテシバ、アドニヤのために言いはんとてソロモン王わうの許もとに至いたりければ王わう起󠄃たちてかれを迎󠄃むかへ彼かれを拜はいして其その位くらゐに坐ゐなほり王わう母ぼのために座ざを設まうけしむ乃すなはち其その右みぎに坐ざせり 20 しかしてバテシバいひけるは我われ一ひとつの細小ちひさき願ねがひを汝なんぢに求もとむわが面かほを黜しりぞくるなかれ王わうかれにいひけるは母はゝ上うへよ求もとめたまへ我われ汝なんぢの面かほを黜しりぞけざるなり 21 彼かれいひけるは請󠄃こふシユナミ人びとアビシヤグをアドニヤに與あたへて妻つまとなさしめよ 22 ソロモン王わう答こたへて其その母はゝにいひけるは何なんぞアドニヤのためにシユナミ人びとアビシヤグを求もとめらるるや彼かれのために國くにをも求もとめられよ彼かれは我われの兄あになればなり彼かれと祭司さいしアビヤタルとゼルヤの子こヨアブのために求もとめられよと 23 ソロモン王わう乃すなはちヱホバを指さして誓ちかひていふ神かみ我われに斯かくなし又󠄂また重かさねて斯かくなしたまへアドニヤは其その身みの生命いのちを喪うしなはんとて此この言ことばを言いひいだせり 24 我われを立たててわが父󠄃ちゝダビデの位くらゐに上のぼらしめ其その約やくせしごとく我われに家いへを建󠄄たてたまひしヱホバは生いくアドニヤは今日けふ戮ころさるべしと 25 ソロモン王わうヱホヤダの子こベナヤを遣󠄃つかはしければ彼かれアドニヤを擊うちて死しなしめたり

26 王わうまた祭司さいしアビヤタルにいひけるは汝なんぢの故こ田でんアナトテにいたれ汝なんぢは死しに當あたる者ものなれども嚮󠄇さきにわが父󠄃ちゝダビデのまへに神かみヱホバの櫃はこを舁かき又󠄂また凡すべてわが父󠄃ちゝの艱難かんなんを受うけたる處ところにて汝なんぢも艱難かんなんを受うけたれば我われ今日けふは汝なんぢを戮ころさじと 27 ソロモン、アビヤタルを逐󠄃おひいだしてヱホバの祭司さいしたらしめざりき斯かくヱホバがシロにてエリの家いへにつきて言いひたまひし言ことば應とけたり
 621㌻ 

28 爰こゝに其その風聞きこえヨアブに達󠄃いたりければヨアブ、ヱホバの幕屋まくやに遁󠄅のがれて壇だんの角つのを執とらへたり其そはヨアブは轉ひるがへりてアブサロムには隨したがはざりしかどもアドニヤに隨したがひたればなり 29 ヨアブがヱホバの幕屋まくやに遁󠄅のがれて壇だんの傍かたはらに居をることソロモンに聞きこえければソロモン、ヱホヤダの子こベナヤを遣󠄃つかはしいひけるは往󠄃ゆきて彼かれを擊うてと 30 ベナヤ乃すなはちヱホバの幕屋まくやにいたり彼かれにいひけるは王わう斯かく言いふ出いで來きたれ彼かれいひけるは否いな我われは此こゝに死しなんとベナヤ反かへりて王わうに吿つげてヨアブ斯かく言いひ斯かく我われに答こたへたりと言いふ 31 王わうベナヤにいひけるは彼かれが言いふごとく爲なし彼かれを擊うちて葬はうむりヨアブが故ゆゑなくして流ながしたる血ちを我われとわが父󠄃ちゝの家いへより除のぞき去さるべし 32 又󠄂またヱホバはヨアブの血ちを其その身みの首かうべに歸きしたまふべし其そは彼かれは己おのれよりも義ただしく且かつ善よかりし二ふたりの人ひとを擊うち劍かたなをもてこれを殺ころしたればなり即すなはちイスラエルの軍ぐんの長かしらネルの子こアブネルとユダの軍ぐんの長かしらヱテルの子こアマサを殺ころせり然しかるに吾わが父󠄃ちゝダビデは與あづかり知しらざりき〘477㌻〙 33 されば彼等かれらの血ちは長久とこしなへにヨアブの首かうべと其その苗裔すゑの首かうべに皈きすべし然されどダビデと其その苗裔すゑと其その家いへと其その位くらゐにはヱホバよりの平󠄃安へいあん永久とこしなへにあるべし 34 ヱホヤダの子こベナヤすなはち上のぼりて彼かれを擊うち彼かれを殺ころせり彼かれは野のにある己おのれの家いへに葬はうむらる 35 王わう乃すなはちヱホヤダの子こベナヤをヨアブに代かへて軍ぐんの長かしらとなせり王わうまた祭司さいしザドクをしてアビヤタルに代かはらしめたり

36 又󠄂また王わう人ひとを遣󠄃やりてシメイを召めして之これに曰いひけるはエルサレムに於おいて汝なんぢの爲ために家いへを建󠄄たてて其處そこに住󠄃すみ其處そこより此こゝにも彼かしこにも出いづるなかれ 37 汝なんぢが出いでてキデロン川がはを濟わたる日ひには汝なんぢ確たしかに知しれ汝なんぢ必かならず戮ころさるべし汝なんぢの血ちは汝なんぢの首かうべに歸きせん 38 シメイ王わうにいひけるは此この言ことばは善よし王わうわが主しゆの言いひたまへるごとく僕しもべ然しかなすべしと斯かくシメイ日ひ久ひさしくエルサレムに住󠄃すめり

39 三年ねんの後のちシメイの二人ふたりの僕しもべガテの王わうマアカの子こアキシの所󠄃ところに逃󠄄にげされり人々ひと〴〵シメイに吿つげていふ視みよ汝なんぢの僕しもべはガテにありと
 622㌻ 
40 シメイ乃すなはち起󠄃たちて其その驢馬ろばに鞍くら置おきガテに往󠄃ゆきてアキシに至いたり其その僕しもべを尋󠄃たづねたり即すなはちシメイ往󠄃ゆきて其その僕しもべをガテより携ひき來きたりしが 41 シメイのエルサレムよりガテにゆきて歸かへりしことソロモンに聞きこえければ 42 王わう人ひとを遣󠄃やりてシメイを召めして之これにいひけるは我われ汝なんぢをしてヱホバを指さして誓ちかはしめ且かつ汝なんぢを戒いましめて汝なんぢ確たしかに知しれ汝なんぢが出いでて此彼ここかしこに步あるく日ひには汝なんぢ必かならず戮ころさるべしと言いひしにあらずや又󠄂また汝なんぢは我われに我わが聞きける言葉ことばは善よしといへり 43 しかるに汝なんぢなんぞヱホバの誓ちかひとわが汝なんぢに命めいじたる命令めいれいを守まもらざりしや 44 王わう又󠄂またシメイにいひけるは汝なんぢは凡すべて汝なんぢの心こゝろの知しる諸もろ〳〵の惡あく即すなはち汝なんぢがわが父󠄃ちゝダビデに爲なしたる所󠄃ところを知しるヱホバ汝なんぢの惡あくを汝なんぢの首かうべに歸きしたまふ 45 されどソロモン王わうは福祉さいはひを蒙かうむらんまたダビデの位くらゐは永久とこしなへにヱホバのまへに固かたく立たつべしと 46 王わうヱホヤダの子こベナヤに命めいじければ彼かれ出いでてシメイを擊うちて死しなしめたりしかして國くにはソロモンの手てに固かたく立たてり

第3章

1 ソロモン、エジプトの王わうパロと緣えんを結むすびパロの女むすめを娶めとりて之これを携つれ來きたり自己おのれの家いへとヱホバの家いへとエルサレムの周󠄃圍󠄃まはりの石垣いしがきを建󠄄築たつることを終󠄃をはるまでダビデの城󠄃まちに置おけり 2 當時そのころまでヱホバの名なのために建󠄄たてたる家いへなかりければ民たみは崇邱たかきところにて祭まつりを爲なせり 3 ソロモン、ヱホバを愛あいし其その父󠄃ちゝダビデの法憲のりに步あゆめり但たゞし彼かれは崇邱たかきところにて祭まつりを爲なし香かうを焚たけり

4 爰こゝに王わうギベオンに往󠄃ゆきて其處そこに祭まつりを爲なさんとせり其そは彼處かしこは大おほいなる崇邱たかきところなればなり即すなはちソロモン一いち千せんの燔祭はんさいを其その壇だんに献さゝげたり〘478㌻〙 5 ギベオンにてヱホバ夜よるの夢ゆめにソロモンに顯あらはれたまへり神かみいひたまひけるは我われ何なにを汝なんぢに與あたふべきか汝なんぢ求もとめよ 6 ソロモンいひけるは汝なんぢは汝なんぢの僕しもべわが父󠄃ちゝダビデが誠󠄃實まことと公󠄃義ただしきと正心まごころを以もて汝なんぢと共ともに汝なんぢの前󠄃まへに步あゆみしに囚よりて大おほいなる恩惠めぐみを彼かれに示しめしたまへり又󠄂また汝なんぢ彼かれのために此この大おほいなる恩惠めぐみを存たくはへて今日こんにちのごとくかれの位くらゐに坐ざする子こを彼かれに賜たまへり
 623㌻ 
7 わが神かみヱホバ汝なんぢは僕しもべをして我わが父󠄃ちゝダビデに代かはりて王わうとならしめたまへり而しかるに我われは小ちひさき子こにして出で入いりすることを知しらず 8 且かつ僕しもべは汝なんぢの選󠄄えらみたまひし汝なんぢの民たみの中うちにあり即すなはち大おほいなる民たみにて其その數󠄄かず衆おほくして數󠄄かぞふることも書しるすことも能あたはざる者ものなり 9 是故このゆえに聽きき別わくる心こゝろを僕しもべに與あたへて汝なんぢの民たみを鞫さばかしめ我われをして善よし惡あしを辨別わきまふることを得えさしめたまへ誰たれか汝なんぢの此これ夥多おびただしき民たみを鞫さばくことを得えんと

10 ソロモン此事このことを求もとめければ其その言ことば主しゆの心こゝろにかなへり 11 是こゝにおいて神かみかれにいひたまひけるは汝なんぢ此事このことを求もとめて己おのれの爲ために長壽ながいきを求もとめず又󠄂また己おのれのために富有󠄃とみをも求もとめず又󠄂また己おのれの敵てきの生命いのちをも求もとめずして惟たゞ訟󠄃うつたへを聽きき別わくる才智さいちを求もとめたるに因よりて 12 視みよ我われ汝なんぢの言ことばに循したがひて爲なせり我われ汝なんぢに賢明かしこく聰慧󠄄さとき心こゝろを與あたふれば汝なんぢの先さきには汝なんぢの如ごとき者ものなく汝なんぢの後あとにも汝なんぢの如ごとき者もの興おこらざるべし 13 我われ亦また汝なんぢの求もとめざる者もの即すなはち富とみと貴たふときとをも汝なんぢに與あたふれば汝なんぢの生いのちの涯かぎり王等わうたちの中うちに汝なんぢの如ごとき者ものあらざるべし 14 又󠄂また汝なんぢ若もし汝なんぢの父󠄃ちゝダビデの步あゆみし如ごとく吾道󠄃わがみちに步あゆみてわが法憲のりと命令めいれいを守まもらば我われ汝なんぢの日ひを長ながうせんと 15 ソロモン目め寤めさて視みるに夢ゆめなりき斯かくてソロモン、エルサレムに至いたりヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこの前󠄃まへに立たち燔祭はんさいを献さゝげ酬恩祭しうおんさいを爲なして其その諸すべての臣僕しもべに饗宴ふるまひを爲なせり

16 爰こゝに娼妓あそびめなる二人ふたりの婦󠄃をんな王わうの所󠄃もとに來きたりて其その前󠄃まへに立たちしが 17 一人ひとりの婦󠄃をんないひけるはわが主しゆよ我われと此この婦󠄃をんなは一ひとつの家いへに住󠄃すむ我われ此この婦󠄃をんなと偕ともに家いへにありて子こを生うめり 18 しかるにわが生うみし後のち第三日みつかめに此この婦󠄃をんなもまた生うめりしかして我儕われら偕ともにありき家いへには他人たにんの我われらと偕ともに居をりし者ものなし家いへには只たゞ我儕われら二人ふたりのみ 19 然しかるに此この婦󠄃をんな其その子この上うへに臥ふしたるによりて夜よの中うちに其その子こ死しにたれば 20 中夜よなかに起󠄃たちて婢しもめの眠ねむれる間あひだにわが子こをわれの側かたはらより取とりて之これを己おのれの懷ふところに臥ふさしめ己おのれの死しにたる子こをわが懷ふところに臥ふさしめたり
 624㌻ 
21 朝󠄃あさに及およびて我われわが子こに乳󠄃ちゝを飮のませんとて興おきて見みるに死しにゐたり我われ朝󠄃あさにいたりて其そのを熟よく視みたるに其そはわが生うめるわが子こにはあらざりしと 22 今いま一人ひとりの婦󠄃をんないふ否いな活いけるはわが子こ死しねるは汝なんぢの子こなりと此この婦󠄃をんないふ否いな死しねるは汝なんぢの子こ活いけるはわが子こなりと彼等かれら斯かく王わうのまへに論いへり〘479㌻〙

23 時ときに王わういひけるは一人ひとりは此この活いけるはわが子こ死しねるは汝なんぢの子こなりと言いひ又󠄂また一人ひとりは否いな死しねるは汝なんぢの子こ活いけるはわが子こなりといふと 24 王わう乃すなはち劍かたなを我われに持もち來きたれといひければ劍かたなを王わうの前󠄃まへに持もち來きたれり 25 王わういひけるは活いける子こを二ふたつに分󠄃わかちて其その半󠄃なかばを此これに半󠄃なかばを彼かれに與あたへよと 26 時ときに其その活いける子この母はゝなる婦󠄃人をんな心こゝろ其その子このために焚やくがごとくなりて王わうに言まをしていひけるは請󠄃こふわが主しゆよ活いける子こを彼かれに與あたへたまへ必かならず殺ころしたまふなかれと然しかれども他ほかの一人ひとりは是これを我われのにも汝なんぢのにもならしめず判󠄄わかたせよと言いへり 27 王わう答こたへていひけるは活いける子こを彼かれに與あたへよ必かならず殺ころすなかれ彼かれは其その母はゝなるなりと 28 イスラエル皆みな王わうの審理さばきし所󠄃ところの判󠄄決さばきを聞きゝて王わうを畏おそれたり其そは神かみの智慧󠄄ちゑの彼かれの中うちにありて審理さばきを爲なさしむるを見みたればなり

第4章

1 ソロモン王わうはイスラエルの全󠄃地ぜんちに王わうたり 2 其その有󠄃もてる群卿きみたちは左さの如ごとしザドクの子こアザリヤは相しやう國こく 3 シシヤの子こエリホレフとアヒヤは書記しよき官くわんアヒルデの子こヨシヤパテは史󠄃し官くわん 4 ヱホヤダの子こベナヤは軍ぐんの長かしらザドクとアビヤタルは祭司さいし 5 ナタンの子こアザリヤは代だい官くわんの長ちやうナタンの子こザブデは大臣だいじんにして王わうの友ともたり 6 アヒシヤルは宮內くない卿きやうアブダの子こアドニラムは徴募ちようぼの長かしらなり

7 ソロモン又󠄂またイスラエルの全󠄃地ぜんちに十二の代だい官くわんを置おけり其その人々ひと〴〵王わうと其その家いへのために食󠄃物しよくもつを備そなへたり即すなはち各おの〳〵一いち年ねんに一月󠄃ひとつき宛づつ食󠄃物しよくもつを備そなへたり 8 其その名な左さのごとしエフライムの山地やまちにはベンホル 9 マカヅとシヤラビムとベテシメシとエロンベテハナンにはベンデケル 10 アルポテにはベンヘセデありシヨコとヘベルの全󠄃地ぜんちとは彼かれ擔任うけもてり 11 ドルの高かう地ちの全󠄃ぜん部ぶにはベンアヒナダブあり彼かれはソロモンの女むすめタパテを妻つまとせり
 625㌻ 
12 アルヒデの子こバアナはタアナクとメギドとヱズレルの下しもにザルタナの邊󠄎ほとりにあるベテシヤンの全󠄃地ぜんちとを擔任うけもちてベテシヤンよりアベルメホラにいたりヨクネアムの外さきにまで及およぶ 13 ギレアデのラモテにはベンゲベルあり彼かれはギレアデにあるマナセの子こヤイルの諸村むら〳〵を擔任うけもち又󠄂またバシヤンなるアルゴブの地ちにある石垣いしがきと銅あかがねの關くわんを有󠄃もてる大おほいなる城󠄃まち六十を擔任うけもてり 14 イドの子こアヒナダブはマハナイムを擔任うけもてり 15 ナフタリにはアヒマアズあり彼かれもソロモンの女むすめバスマテを妻つまに娶めとれり 16 アセルとアロテにはホシヤイの子こバアナあり 17 イツサカルにはパルアの子こヨシヤパテあり 18 ベニヤミンにはエラの子こシメイあり〘480㌻〙 19 アモリ人びとの王わうシホンの地ちおよびバシヤンの王わうオグの地ちなるギレアデの地ちにはウリの子こゲベルあり其その地ちにありし代だい官くわんは唯たゞ彼かれ一人ひとりのみ

20 ユダとイスラエルの人ひとは多おほくして濱はまの沙いさごの多おほきがごとくなりしが飮のみ食󠄃くひして樂たのしめり 21 ソロモンは河かはよりペリシテ人びとの地ちにいたるまでとエジプトの境さかひに及およぶまでの諸國しよこくを治をさめたれば皆みな禮物れいもつを餽おくりてソロモンの一いつ生しやうの間あひだ事つかへたり 22 偖さてソロモンの一いち日にちの食󠄃物しよくもつは細こまかき麺むぎこ三十石こく粗あらき麺むぎこ六十石こく 23 肥こえたる牛うし十とを牧場まきばの牛うし二十羊ひつじ一いつ百ぴやく其その外ほかに牡を鹿じか羚羊かもしか小鹿こじかおよび肥こえたる禽とりあり 24 其そはソロモン河かはの此方こなたをテフサよりガザまで盡こと〴〵く治をさめたればなり即すなはち河かはの此方こなたの諸王わうたちを悉こと〴〵く統治すべをさめたり彼かれは四方しはうの臣僕しんより平󠄃安へいあんを得えたりき 25 ソロモンの一いつ生しやうの間あひだユダとイスラエルはダンよりベエルシバに至いたるまで安然やすらかに各おの〳〵其その葡萄樹ぶだうのきの下したと無花果いちじくの樹きの下したに住󠄃すめり 26 ソロモン戰車いくさぐるまの馬むまの廐󠄇むまや四千騎兵きへい一萬まん二千せんを有󠄃もてり 27 彼かの代だい官くわん等ら各おの〳〵其その月󠄃つきにソロモン王わうのためおよび總󠄂すべてソロモン王わうの席せきに來きたる者ものの爲ために食󠄃しよくを備そなへて缺かくるとこるなからしめたり 28 又󠄂また彼等かれら各おの〳〵其その職つとめに循したがひて馬むまおよび疾はや足あしの馬むまに食󠄃くはする大おほ麥むぎと蒭蕘わらを其その馬むまの在をる處ところに携たづさへ來きたれり
 626㌻ 

29 神かみソロモンに智慧󠄄ちゑと聰明さとりを甚はなはだ多おほく賜たまひ又󠄂また廣大ひろき心こゝろを賜たまふ海濱はまの沙いさごのごとし 30 ソロモンの智慧󠄄ちゑは東洋ひがしの人々ひと〴〵の智慧󠄄ちゑとエジプトの諸すべての智慧󠄄ちゑよりも大おほいなりき 31 彼かれは凡すべての人ひとよりも賢かしこくエズラ人びとエタンよりも又󠄂またマホルの子こなるヘマンとカルコルおよびダルダよりも賢かしこくして其その名な四方よもの諸國くに〴〵に聞きこえたり 32 彼かれ箴言しんげん三千を説とけり又󠄂また其その詩歌うたは一千せん五首しゆあり 33 彼かれ又󠄂また草木くさきの事ことを論ろんじてレバノンの香柏かうはくより墻かきに生いづる苔こけに迄まで及およべり彼かれ亦また獸けものと鳥とりと匐行はふ物ものと魚うをの事ことを論ろんじたり 34 諸もろ〳〵の國くにの人々ひと〴〵ソロモンの智慧󠄄ちゑを聽きかんとて來きたり天てん下かの諸もろ〳〵の王わうソロモンの智慧󠄄ちゑを聞きゝ及およびて人ひとを遣󠄃つかはせり

第5章

1 ツロの王わうヒラム、ソロモンの膏あぶらそそがれて其その父󠄃ちゝにかはりて王わうとなりしを聞きゝて其その臣僕けらいをソロモンに遣󠄃つかはせりヒラムは恒つねにダビデを愛あいしたる者ものなりければなり 2 是こゝに於おいてソロモン、ヒラムに言遣󠄃いひつかはしけるは 3 汝なんぢの知しるごとく我われ父󠄃ちゝダビデは其その周󠄃圍󠄃まはりにありし戰爭いくさに因よりて其その神かみヱホバの名なのために家いへを建󠄄たつること能あたはずしてヱホバが彼等かれらを其その足あしの跖うらの下したに置おきまたふを待まてり 4 然しかるに今いまわが神かみヱホバ我われに四方しはうの太平󠄃たいへいを賜たまひて敵てきもなく殃わざはひもなければ 5 我われはヱホバのわが父󠄃ちゝダビデに語かたりてわが汝なんぢの代かはりに汝なんぢの位くらゐに上のぼらしむる汝なんぢの子こ其人そのひとはわが名なのために家いへを建󠄄たつべしと言いひたまひしに循したがひてわが神かみヱホバの名なのために家いへを建󠄄たてんとす〘481㌻〙 6 されば汝なんぢ命めいじてわがためにレバノンより香柏かうはくを砍きり出いださしめよわが僕しもべ汝なんぢの僕しもべと共ともにあるべし又󠄂また我われは凡すべて汝なんぢの言いふごとく汝なんぢの僕しもべの賃ちん銀ぎんを汝なんぢに付わたすべし其そは汝なんぢの知しるごとく我儕われらの中うちにはシドン人びとの如ごとく木きを砍きるに巧たくみみなる人ひとなければなりと
 627㌻ 

7 ヒラム、ソロモンの言ことばを聞きゝて大おほいに喜よろこび言いひけるは今日けふヱホバに稱󠄄譽ほまれあれヱホバ、ダビデに此これ夥多おびただしき民たみを治をさむる賢かしこき子こを與あたへたまへりと 8 かくてヒラム、ソロモンに言遣󠄃いひおくりけるは我われ汝なんぢが言いひ遣󠄃こしたる所󠄃ところの事ことを聽きけり我われ香柏かうはくの材木ざいもくと松󠄃まつの樹きの材木ざいもくとに付ついては凡すべて汝なんぢの望󠄇のぞむごとく爲なすべし 9 わが僕しもべレバノンより海うみに持もち下くだらんしかして我われこれを海うみより桴いかだにくみて汝なんぢが我われに言いひ遣󠄃つかはす處ところにおくり其處そこにて之これをくづすべし汝なんぢ之これを受うけよ又󠄂また汝なんぢはわが家いへのために食󠄃物しよくもつを與あたへてわが望󠄇のぞみを成󠄃なせと 10 斯かくてヒラムはソロモンに其その凡すべて望󠄇のぞむごとく香柏かうはくの材木ざいもくと松󠄃まつの材木ざいもくを與あたへたり 11 又󠄂またソロモンはヒラムに其その家いへの食󠄃物しよくもつとして小麥こむぎ二萬まん石ごくを與あたへまた淸すみ油あぶら二十石こくをあたへたり斯かくソロモン年々とし〴〵ヒラムに與あたへたり 12 ヱホバ其その言いひたまひしごとくソロモンに智慧󠄄ちゑを賜たまへりまたヒラムとソロモンの間あひだ睦むつましくして二人ふたり偕ともに契󠄅約けいやくを結むすべり

13 爰こゝにソロモン王わうイスラエルの全󠄃地ぜんちに徴ちよう募ぼ人にんを興おこせり其その徴ちよう募ぼ人にんの數󠄄かずは三萬人まんにんなり 14 ソロモンかれらを一月󠄃ひとつき交󠄄代がはりに一萬人まんにんづつレバノンに遣󠄃つかはせり即すなはち彼等かれらは一月󠄃ひとつきレバノンに二月󠄃ふたつき家いへにありアドニラムは徴ちよう募ぼ人にんの督者かみなりき 15 ソロモン負󠄅載におひ者びと七萬人まんにん山やまに於おいて石いしを砍きる者もの八萬人まんにんあり 16 外ほかに又󠄂また其その工事こうじの長かしらなる官吏󠄄くわんり三千ぜん三百びやく人にんありて工事こうじに作はたらく民たみを統すべたり 17 かくて王わう命めいじて大おほいなる石いし貴たふとき石いしを鑿きり出いださしめ琢きり石いしを以もて家いへの基礎もとゐを築きづかしむ 18 ソロモンの建󠄄築者いへづくりとヒラムの建󠄄築者いへづくりおよびゲバル人びと之これを砍きれり斯かく彼等かれら材木ざいもくと石いしを家いへを建󠄄たつるに備そなへたり

第6章

1 イスラエルの子孫ひと〴〵のエジプトの地ちを出いでたる後のち四百ひやく八十年ねんソロモンのイスラエルに王わうたる第だい四よ年ねんジフの月󠄃つき即すなはち二月󠄃ぐわつにソロモン、ヱホバのために家いへを建󠄄たつることを始はじめたり 2 ソロモン王わうのヱホバの爲ために建󠄄たてたる家いへは長ながさ六十キユビト濶ひろさ二十キユビト高たかさ三十キユビトなり 3 家いへの拜殿はいでんの廊らうは家いへの濶ひろさに循したがひて長ながさ二十キユビト家いへの前󠄃まへの其その濶ひろさ十キユビトなり
 628㌻ 
4 彼かれ家いへに造󠄃つくり附つけの格子かうしある窻まどを施つけたり〘482㌻〙 5 又󠄂また家いへの墻壁かべに附つけて四周󠄃まはりに連󠄃接つけ屋やを建󠄄たて家いへの墻壁かべ即すなはち拜殿はいでんと神殿しんでんの墻壁かべの周󠄃圍󠄃まはりに環󠄃めぐらせり又󠄂また四周󠄃まはりに旁わき房󠄃まを造󠄃つくれり 6 下層したの連󠄃接つけ屋やは濶ひろさ五キユビト中層なかのは濶ひろさ六キユビトを第三層みつめのは濶ひろさ七キユビトなり即すなはち家いへの外そとに階級きだを造󠄃つくり環󠄃めぐらして何なに者ものをも家いへの墻壁かべに挿入さしいらざらしむ 7 家いへは建󠄄たつる時ときに鑿石きりいし所󠄃どころにて鑿きり預備ととのへたる石いしにて造󠄃つくりたれば造󠄃つくれる間あひだに家いへの中うちには鎚󠄃つちも鑿のみも其その外ほかの鐵てつ器きも聞きこえざりき 8 中層なかの旁わき房󠄃まの戶とは家いへの右みぎの方かたにあり螺ねじ旋梯ばしごより中層なかの房󠄃まにのぼり中層なかの房󠄃まより第三層みつめの房󠄃まにいたるべし 9 斯かく彼かれ家いへを建󠄄たて終󠄃をはり香柏かうはくの橡たるきと板いたをもて家いへを葺󠄄ふけり 10 又󠄂また家いへに附つけて五キユビトの高たかさたる連󠄃接つけ屋やを建󠄄たて環󠄃めぐらし香柏かうはくをもて家いへに交󠄄接つづけたり

11 爰こゝにヱホバの言ことばソロモンに臨のぞみて曰いはく 12 汝なんぢ今いま此この家いへを建󠄄たつ若もし汝なんぢわが法憲のりに步あゆみわが律例さだめを行おこなひわが諸すべての誡命いましめを守まもりて之これにしたがひて步あゆまばわれはが汝なんぢの父󠄃ちゝダビデに言いひし語ことばを汝なんぢに固かたうすべし 13 我われイスラエルの子孫ひと〴〵の中うちに住󠄃すみわが民たみイスラエルを棄すてざるべし

14 斯かくソロモン家いへを建󠄄たて終󠄃をはれり 15 彼かれ香柏かうはくの板いたを以もて家いへの墻壁かべの裏面うちを作つくれり即すなはち家いへの牀板ゆかより頂格てんじやうの墻壁かべまで木きをもて其その裏面うちをはりまた松󠄃まつの板いたをもて家いへの牀板ゆかをはれり 16 又󠄂また家いへの奧おくに二十キユビトの室まを牀板ゆかより墻壁かべまで香柏かうはくをもて造󠄃つくれり即すなはち家いへの內うちに至し聖󠄃所󠄃せいじよなる神殿しんでんを造󠄃つくれり 17 家いへ即すなはち前󠄃まへにある拜殿はいでんは四十キユビトなり 18 家いへの內うちの香柏かうはくは瓠ひさごと咲󠄃さける花はなを雕刻󠄂きざめる者ものなり皆みな香柏かうはくにして石いしは見みえざりき 19 神殿しんでんは彼かれ其處そこにヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこを置おかんとて家いへの內うちの中なかに設まうけたり 20 神殿しんでんの內うちは長ながさ二十キユビト濶ひろさ二十キユビト高たかさ二十キユビトなり純金じゆんきんをもて之これを蔽おほひ又󠄂また香柏かうはくの壇だんを覆󠄄おほへり 21 又󠄂またソロモン純金じゆんきんをもて家いへの內うちを蔽おほひ神殿しんでんの前󠄃まへに金きんの鏈くさりをもて間隔󠄃へだてを造󠄃つくり金きんをもて之これを蔽おほへり
 629㌻ 
22 又󠄂また金きんをもて殘のこるところなく家いへを蔽おほひ遂󠄅つひに家いへを飾󠄃かざることを悉こと〴〵く終󠄃をへたりまた神殿しんでんの傍かたはらにある壇だんは皆みな金きんをもて蔽おほへり

23 神殿しんでんの內うちに橄欖かんらんの木きをもて二ふたつのケルビムを造󠄃つくれり其その高たかさ十キユビト 24 其そのケルブの一ひとつの翼󠄅つばさは五キユビト又󠄂また其そのケルブの他ほかの翼󠄅つばさも五キユビトなり一ひとつの翼󠄅つばさの末はじより他ほかの翼󠄅つばさの末はじまでは十キユビトあり 25 他ほかのケルブも十キユビトなり其そのケルビムは偕ともに同おなじ量りやう同おなじ形かたちなり 26 此このケルブの高たかさ十キユビト彼かのケルブも亦またしかり 27 ソロモン家いへの內うちの中なかにケルビムを置すゑケルビムの翼󠄅つばさを展のばしければ此このケルブの翼󠄅つばさは此この墻壁かべに及および彼かのケルブの翼󠄅つばさは彼かの墻壁かべに及およびて其その兩ふたつの翼󠄅つばさ家いへの中なかにて相あひ接まじはれり〘483㌻〙 28 彼かれ金きんをもてケルビムを蔽おほへり

29 家いへの周󠄃圍󠄃まはりの墻壁かべには皆みな內外うちそとともにケルビムと棕櫚しゆろと咲󠄃さける花はなの形かたちを雕きざみ 30 家いへの牀板ゆかには內外うちそとともに金きんを蔽おほへり 31 神殿しんでんの入いり口くちには橄欖かんらんの木きの戶とを造󠄃つくれり其その木匡わくの門柱󠄃はしらは五分󠄃ぶんの一なり 32 其その二ふたつの扉󠄆とびらも亦また橄欖かんらんの木きなりソロモン其その上うへにケルビムと棕櫚しゆろと咲󠄃さける花はなの形かたちを雕刻󠄂きざみ金きんをもて蔽おほへり即すなはちケルビムと棕櫚しゆろの上うへに金きんを鍍きせたり 33 斯かくソロモン亦また拜殿はいでんの戶とのために橄欖かんらんの木きの門柱󠄃はしらを造󠄃つくれり即すなはち四分󠄃ぶんの一なり 34 其その二ふたつの戶とは松󠄃まつの木きにして此この戶との兩ふたつの扉󠄆とびらは摺たゝむべく彼かの戶との兩ふたつの扉󠄆とびらも摺たゝむべし 35 ソロモン其その上うへにケルビムと棕櫚しゆろと咲󠄃さける花はなを雕刻󠄂きざみ金きんをもてこれを蔽おほひて善よく其その雕工ほりものに適󠄄かなはしむ 36 また鑿石きりいし三層みかさねと香柏かうはくの厚あつ板いた一ひと層かさねをもて內うち庭󠄄にはを造󠄃つくれり

37 第だい四よ年ねんのジフの月󠄃つきにヱホバの家いへの基礎もとゐを築きづき 38 第だい十一年ねんのブルの月󠄃つき即すなはち八月󠄃ぐわつに凡すべて其その箇條かでうのごとく其その定例ならはしのごとくに家いへ成󠄃なりぬ斯かくソロモン之これに建󠄄たつるに七年ねんを渉わたれり

第7章

1 ソロモン己おのれの家いへを建󠄄たてしが十三年ねんを經へて全󠄃まつたく其その家いへを建󠄄たて終󠄃をへたり 2 彼かれレバノン森もりの家いへを建󠄄たてたり其その長ながさは百キユビト其その濶ひろさは五十キユビト其その高たかさは三十キユビトなり香柏かうはくの柱󠄃はしら四行よならびありて柱󠄃はしらの上うへに香柏かうはくの梁はりあり
 630㌻ 
3 四十五本ほんの柱󠄃はしらの上うへなる梁はりの上うへは香柏かうはくにて蓋おほへり柱󠄃はしらは一行ひとならびに十五本ほんあり 4 また窻まど三行みならびありて牖まどと牖まどと三段だんに相對あひむかふ 5 戶とと戶と柱󠄃ばしらは皆みな大たい木ぼくをもて角かくに造󠄃つくり牖まどと牖まどと三段だんに相對あひむかへり 6 又󠄂また柱󠄃はしらの廊らうを造󠄃つくれり其その長ながさ五十キユビト其その濶ひろさ三十キユビトなり柱󠄃はしらのまへに一ひとつの廊らうありまた其その柱󠄃はしらのまへに柱󠄃はしらと階きだはしあり 7 又󠄂またソロモン審判󠄄さばきを爲なすために位くらゐの廊らう即すなはち審判󠄄さばきの廊らうを造󠄃つくり牀板ゆかより牀板ゆかまで香柏かうはくをもて蔽おほへり 8 ソロモンの居住󠄃すめる家いへは其その廊らうの後うしろの他ほかの庭󠄄にはにありて其その工作つくり同おなじかりきソロモン亦また其その娶めとりたるパロの女むすめのために家いへを建󠄄たてしが此この廊らうに同おなじかりき

9 是等これらは內外うちそととも基礎もとゐより檐のきにいたるまで又󠄂また外面そとにては大庭󠄄おほにはにいたるまで皆みな鑿石きりいしの量りやうにしたがひて鋸のこぎりにて剖ひきたる貴たふとき石いしをもて造󠄃つくれるものなり 10 又󠄂また基礎もとゐは貴たふとき石いし大おほいなる石いし即すなはち十キユビトの石いし八キユビトの石いしなり 11 其その上うへには鑿石きりいしの量りやうに循したがひて貴たふとき石いしと香柏かうはくあり 12 又󠄂また大庭󠄄おほにはの周󠄃圍󠄃まはりにに三層みかさねの鑿石きりいしと一層ひとかさねの香柏かうはくの厚あつ板いたありヱホバの家いへの內うち庭󠄄にはと家いへの廊らうにおけるが如ごとし

13 爰こゝにソロモン人ひとを遣󠄃つかはしてヒラムをツロより召よび來きたれり〘484㌻〙 14 彼かれはナフタリの支󠄂派󠄄わかれなる嫠婦󠄃やもめの子こにして其その父󠄃ちゝはツロの人ひとにて銅あかがねの細工さいく人にんなりヒラムは銅あかがねの諸もろ〳〵の細工さいくを爲なすの智慧󠄄ちゑと慧󠄄悟さとりと知識ちしきの充みちたる者ものなりしがソロモン王わうの所󠄃ところに來きたりて其その諸すべての細工さいくを爲なせり 15 彼かれ銅あかがねの柱󠄃はしら二ふたつを鑄いたり其その高たかさ各おの〳〵十八キユビトにして各おの〳〵十二キユビトの繩󠄂なはを環󠄃めぐらすべし 16 又󠄂また銅あかがねを鎔とかして柱󠄃はしらの頭かしらを鑄いて柱󠄃はしらの顚うへに置すゆ此この頭かしらの高たかさも五キユビト彼かの頭かしらの高たかさも五キユビトなり 17 柱󠄃はしらの上うへにある頭かしらの爲ために組くみ物ものの網󠄄あみと鏈くさり樣なりの槎より物ものを造󠄃つくれり此この頭かしらに七なゝつ彼かの頭かしらに七なゝつあり 18 又󠄂また二ふた行ならびの石榴ざくろを一ひとつの網󠄄あみ工ものの上うへの四周󠄃まはりに造󠄃つくりて柱󠄃はしらの上うへにある頭かしらを蓋おほふ他ほかの頭かしらをも亦また然しかせり 19 柱󠄃はしらの上うへにある頭かしらは四キユビトの百合花ゆりの形かたちにして廊らうにおけるがごとし
 631㌻ 
20 二ふたつの柱󠄃はしらの頭かしらの上うへには亦また網󠄄あみ工ものの外そとなる腹はらの所󠄃ところに接つづきて石榴ざくろあり他ほかの柱󠄃はしらの四周󠄃まはりにも石榴ざくろ二百ひやくありて相あひ列ならべり 21 此この柱󠄃はしらを拜殿はいでんの廊らうに竪たつ即すなはち右みぎの柱󠄃はしらを立たてて其その名なをヤキンと名なづけ左ひだりの柱󠄃はしらを竪たて其その名なをボアズと名なづく 22 其その柱󠄃はしらの上うへに百合花ゆりの形かたちあり斯かく其その柱󠄃はしらの作さく成󠄃なれり

23 又󠄂また海うみを鑄いなせり此この邊󠄎ふちより彼かの邊󠄎ふちまで十キユビトにして其その四周󠄃まはり圓まろく其その高たかさ五キユビトなり其その四周󠄃まはりは三十キユビトの繩󠄂なはを環󠄃めぐらすべし 24 其その邊󠄎ふちの下したには四周󠄃まはりに匏瓜ひさごありて之これを環󠄃めぐれり即すなはち一キユビトに十とをづつありて海うみの周󠄃圍󠄃まはりを圍󠄃かこめり其その匏瓜ひさごは海うみを鑄いたる時ときに二ふた行ならびに鑄いたるなり 25 其その海うみは十二の牛うしの上うへに立たてり其その三みつは北きたに向むかひ三みつは西にしに向むかひ三みつは南みなみに向むかひ三みつは東ひがしに向むかふ海うみ其その上うへにありて牛うしの後うしろは皆みな內うちに向むかふ 26 海うみの厚あつさは手て寛はばにして其その邊󠄎ふちは百合花ゆりにて杯さかづきの邊󠄎ふちの如ごとくに作つくれり海うみは二千せん斗とを容いれたり

27 又󠄂また銅あかがねの臺だい十とをを造󠄃つくれり一ひとつの臺だいの長ながさ四キユビト其その濶ひろさ四キユビト其その高たかさ三キユビトなり 28 其その臺だいの製作つくりは左さのごとし臺だいには嵌かがみ板いたあり嵌かがみ板いたは邊󠄎ふちの中なかにあり 29 邊󠄎ふちの中うちにある嵌かがみ板いたの上うへに獅子しゝと牛うしとケルビムあり又󠄂また邊󠄎ふちの上うへに座ざあり獅子しゝと牛うしの下したに花はな飾󠄃かざりの垂下さげ物ものあり 30 其その臺だいには各おの〳〵四よつの銅あかがねの輪わと銅あかがねの軸じくあり其その四よつの足あしには肩󠄃かたのごとき者ものあり其その肩󠄃かたのごとき者ものは洗盤はちの下したにありて凡すべての花はな飾󠄃かざりの旁かたはらに鑄いつけたり 31 其その口くちは頭かしらの內うちより上うへは一キユビトなり其その口くちは圓まろく一キユビト半󠄃はんにして座ざの作つくりの如ごとし又󠄂また其その口くちには雕工ほりものあり其その鏡かがみ板いたは四角しかくにして圓まろからず 32 四よつの輪わは鏡かがみ板いたの下したにあり輪わの手ては臺だいの中うちにあり輪わは各おの〳〵高たかさ一キュビト半󠄃はん 33 輪わの工作つくりは戰車いくさぐるまの輪わの工作つくりの如ごとし其その手てと緣ふちと輻やと轂こしきとは皆みな鑄い物ものなり 34 臺だいの四よ隅すみに四よつの肩󠄃かたの如ごとき者ものあり其その肩󠄃かたのごとき者ものは臺だいより出いづ〘485㌻〙 35 臺だいの上うへの所󠄃ところの高たかさ半󠄃はんキユビトは其その周󠄃圍󠄃まはり圓まろし又󠄂また臺だいの上うへの所󠄃ところの手てと鏡かがみ板いたも臺だいより出いづ 36 其その手ての板いたと鏡かがみ板いたには其その各おの〳〵の𨻶處あきに循したがひてケルビムと獅子しゝと棕櫚しゆろを雕刻󠄂きざみ又󠄂また其その四周󠄃まはりに花はな飾󠄃かざりを造󠄃つくれり
 632㌻ 
37 是かくのごとく十とをの臺だいを造󠄃つくれり其その鑄い法かたと量りやうと形かたちは皆みな同おなじ

38 又󠄂また銅あかがねの洗盤はち十とをを造󠄃つくれり洗盤はちは各おの〳〵四十斗とを容いれ洗盤はちは各おの〳〵四キユビトなり十とをの臺だいの上うへには各おの〳〵一ひとつの洗盤はちあり 39 其その臺だい五いつつを家いへの右みぎの旁かたに五いつつを家いへの左さの旁かたに置すゑ家いへの右みぎの東ひがし南みなみに其その海うみを置おけり 40 ヒラム又󠄂また鍋なべと火鏟じふのうと鉢はちとを造󠄃つくれり斯かくヒラム、ヱホバの家いへの爲ためにソロモン王わうに爲なせる諸もろ〳〵の細工さいくを成󠄃終󠄃なしをへたり 41 即すなはち二ふたつの往󠄃ゆかと其その柱󠄃はしらの上うへなる頭かしらの二ふたつの毬たまと柱󠄃はしらの上うへなる其その頭かしらの二ふたつの毬たまを蓋おほふ二ふたつの網󠄄工あみものと 42 其その二ふたつの網󠄄あみ工ものの爲ための石榴ざくろ四百是これは一ひとつの網󠄄あみ工ものに石榴ざくろ二ふた行ならびありて柱󠄃はしらの上うへなる二ふたつの毬たまを蓋おほふ 43 又󠄂また十とをの臺だいと其その臺だいの上うへの十とをの洗盤はちと 44 一ひとつの海うみと其その海うみの下したの十二の牛うし 45 及および鍋なべと火鏟じふのうと鉢はち是これ也なりヒラムがソロモン王わうにヱホバの家いへのために造󠄃つくりし此これ等らの器うつはは皆みな光明あかりある銅あかがねなりき 46 王わうヨルダンの低地くぼちに於おいてスコテとザレタンの間あひだの粘ねば土つちの地ちにて之これを鑄いたり 47 ソロモン其その器うつは甚はなはだしく多おほかりければ皆みな權はからずに措おけり其その銅あかがねの重おもさしれざりき

48 又󠄂またソロモン、ヱホバの家いへの諸もろ〳〵の器うつはを造󠄃つくれり即すなはち金かねの壇だんと供前󠄃そなへのパンを載のする金きんの案つくゑ 49 および純金じゆんきんの燈とう臺だい是これは神殿しんでんのまへに五いつつは右みぎに五いつつは左ひだりにあり又󠄂また金きんの花はなと燈ともしび盞ざらと燈鉗しんかきと 50 純金じゆんきんの盆󠄃ほとぎと剪刀はさみと鉢はちと皿さらと滅燈器しんとりと至し聖󠄃所󠄃せいじよなる內うちの家いへの戶とのため及および拜殿はいでんなる家いへの戶とのためなる金きんの肘鈕ひぢつぼ是これなり

51 斯かくソロモン王わうのヱホバの家いへのために爲なせる諸もろ〳〵の細工さいく終󠄃をはれり是こゝにおいてソロモン其その父󠄃ちゝダビデが奉納󠄃をさめたる物もの即すなはち金銀きんぎんおよび器うつはを携たづさへいりてヱホバの家いへの寳はう物もつの中うちに置おけり

第8章

1 爰こゝにソロモン、ヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこをダビデの城󠄃まち即すなはちシオンより舁かき上のぼらんとてイスラエルの長老としよりと諸すべての支󠄂派󠄄わかれの首かしらイスラエルの子孫ひと〴〵の家いへの長等きみたちをエルサレムにてソロモン王わうの所󠄃もとに召集よびあつむ 2 イスラエルの人ひと皆みなエタニムの月󠄃つき即すなはち七月󠄃ぐわつの節󠄄筵いはひに當あたりてソロモン王わうの所󠄃ところに集あつまれり
 633㌻ 
3 イスラエルの長老としより皆みな至いたり祭司さいし櫃はこを執とりあげて 4 ヱホバの櫃はこと集會あつまりの幕屋まくやと幕屋まくやにありし諸もろ〳〵の聖󠄃きよき器うつはを舁かき上のぼれり即すなはち祭司さいしとレビの人びと之これを舁かきのぼれり 5 ソロモン王わうおよび其その許もとに集あつまれるイスラエルの會衆くわいしう皆みな彼かれと偕ともに櫃はこの前󠄃まへにありて羊ひつじと牛うしを献さゝげたりしが其その數󠄄かず多おほくして書しるすことも數󠄄かぞふることも能あたはざりき〘486㌻〙 6 祭司さいしヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこを其その處ところに舁かきいれたり即すなはち家いへの神殿しんでんなる至し聖󠄃所󠄃せいじよの中うちのケルビムの翼󠄅つばさの下したに置おさめたり 7 ケルビムは翼󠄅つばさを櫃はこの所󠄃ところに舒のべ且かつケルビム上うへより櫃はこと其その棹さをを掩おほへり 8 杠さを長ながかりければ杠さをの末はしは神殿しんでんの前󠄃まへの聖󠄃所󠄃せいじよより見みえたり然しかれども外そとには見みえざりき其その杠さをは今日けふまで彼處かしこにあり 9 櫃はこの內うちには二ふたつの石いしの牌いたの外ほか何なにもあらざりき是これはイスラエルの子孫ひと〴〵のエジプトの地ちより出いでたる時ときヱホバの彼等かれらと契󠄅約けいやくを結むすびたまへる時ときにモーセがホレブにて其處そこに置おさめたる者ものなり 10 斯かくて祭司さいし聖󠄃所󠄃せいじよより出いでけるに雲くもヱホバの家いへに盈みちたれば 11 祭司さいしは雲くものために立たちて供事つかふること能あたはざりき其そはヱホバの榮光えいくわうヱホバの家いへに盈みちたればなり

12 是こゝにおいてソロモンいひけるはヱホバは濃あつき雲くもの中うちに居ゐんといひたまへり 13 我われ誠󠄃まことに汝なんぢのために住󠄃すむべき家いへ永久とこしなへに居をるべき所󠄃ところを建󠄄たてたりと 14 王わう其その面かほを轉ふりむけてイスラエルの凡すべての會衆くわいしうを祝しゆくせり時ときにイスラエルの會衆くわいしうは皆みな立たちゐたり 15 彼かれ言いひけるはイスラエルの神かみヱホバは譽ほむべきかなヱホバは其その口くちをもて吾わが父󠄃ちゝダビデに言いひ其その手てをもて之これを成󠄃なし遂󠄅とげたまへり 16 即すなはち我われは吾わが民たみイスラエルをエジプトより導󠄃みちびき出いだせし日ひより我わが名なを置おくべき家いへを建󠄄たてしめんためにイスラエルの諸もろ〳〵の支󠄂派󠄄わかれの中うちより何いづれの城󠄃邑まちをも選󠄄えらみしことなし但たゞダビデを選󠄄えらみてわが民たみイスラエルの上うへに立たゝしめたりと言いひたまへり 17 夫それイスラエルの神かみヱホバの名なのために家いへを建󠄄たつることはわが父󠄃ちゝダビデの心こゝろにありき 18 しかるにヱホバわが父󠄃ちゝダビデにいひたまひけるはわが名なのために家いへを建󠄄たつること汝なんぢの心こゝろにあり汝なんぢの心こゝろに此事このことあるは善よし
 634㌻ 
19 然しかれども汝なんぢは其その家いへを建󠄄たつべからず汝なんぢの腰󠄃こしより出いづる汝なんぢの子こ其人そのひと吾わが名なのために家いへを建󠄄たつべしと 20 而しかしてヱホバ其その言いひたまひし言ことばを行おこなひたまへり即すなはち我われわが父󠄃ちゝダビデに代かはりて立たちヱホバの言いひたまひし如ごとくイスラエルの位くらゐに坐ざしイスラエルの神かみヱホバの名なのために家いへを建󠄄たてたり 21 我われ又󠄂また其處そこにヱホバの契󠄅約けいやくを藏をさめたる櫃はこのために一ひとつの所󠄃ところを設まうけたり即すなはち我儕われらの父󠄃祖せんぞをエジプトの地ちより導󠄃みちびき出いだしたまひし時ときに彼等かれらに爲なしたまひし者ものなりと

22 ソロモン、イスラエルの凡すべての會衆くわいしうの前󠄃まへにてヱホバの壇だんのまへに立たち其その手てを天てんに舒のべて 23 言いひけるはイスラエルの神かみヱホバよ上うへの天てんにも下したの地ちにも汝なんぢの如ごとき神かみなし汝なんぢは契󠄅約けいやくを持たもちたまひ心こゝろを全󠄃まつたうして汝なんぢのまへに步あゆむところの汝なんぢの僕しもべ等らに恩惠めぐみを施ほどこしたまふ 24 汝なんぢは汝なんぢの僕しもべわが父󠄃ちゝダビデに語いふたまへる所󠄃ところを持たもちたまへり汝なんぢは口くちをもて語いひ手てをもて成󠄃なし遂󠄅とげたまへること今日こんにちのごとし〘487㌻〙 25 イスラエルの神かみヱホバよ然されば汝なんぢが僕しもべわが父󠄃ちゝダビデに語かたりて若もし汝なんぢの子孫しそん其その道󠄃みちを愼つゝしみて汝なんぢがわが前󠄃まへに步あゆめるごとくわが前󠄃まへに步あゆまばイスラエルの位くらゐに坐ざする人ひとわがまへにて汝なんぢに缺かくること無なかるべしといひたまひし事ことをダビデのために持たもちたまへ 26 然さればイスラエルの神かみよ爾なんぢが僕しもべわが父󠄃ちゝダビデに言いひたまへる爾なんぢの言ことばに效驗しるしあらしめたまへ

27 神かみ果はたして地ちの上うへに住󠄃すみたまふや視みよ天てんも諸もろ〳〵の天てんの天てんも爾なんぢを容いるるに足たらず况まして我わが建󠄄たてたる此この家いへをや 28 然しかれどもわが神かみヱホバよ僕しもべの祈禱いのりと懇願ねがひを顧󠄃かへりみて其その號呼よばはりと僕しもべが今日こんにち爾なんぢのまへに祈いのる祈禱いのりを聽きゝたまへ 29 願ねがはくは爾なんぢの目めを夜よる晝ひる此この家いへに即すなはち爾なんぢが我わが名なは彼處そこに在あるべしといひたまへる處ところに向むかひて開ひらきたまへ願ねがはくは僕しもべの此處このところに向むかひて祈いのらん祈禱いのりを聽きゝたまへ 30 願ねがはくは僕しもべと爾なんぢの民たみイスラエルが此この處ところに向むかひて祈いのる時ときに爾なんぢ其その懇願ねがひを聽きゝたまへ爾なんぢは爾なんぢの居處すみかなる天てんにおいて聽きき聽きゝて赦ゆるしたまへ
 635㌻ 

31 若もし人ひと其その隣人となりびとに對むかひて犯をかせることありて其人そのひと誓ちかひをもて誓ちかふことを要󠄃もとめられんに來きたりて此この家いへにおいて爾なんぢの壇だんのまへに誓ちかひなば 32 爾なんぢ天てんにおいて聽きゝて行おこなひ爾なんぢの僕しもべ等らを鞫さばき惡あしき者ものを罪つみして其その道󠄃みちを其その首かうべに歸きし義たゞしき者ものを義ぎとして其その義ただしきに循したがひて之これに報むくいたまへ

33 若もし爾なんぢの民たみイスラエル爾なんぢに罪つみを犯をかしたるがために敵てきの前󠄃まへに敗やぶられんに爾なんぢに歸かへりて爾なんぢの名なを崇あがめ此この家いへにて爾なんぢに祈いのり願ねがひなば 34 爾なんぢ天てんにおいて聽きき爾なんぢの民たみイスラエルの罪つみを赦ゆるして彼等かれらを爾なんぢが其その父󠄃祖せんぞに與あたへし地ちに歸かへらしめたまへ

35 若もし彼等かれらが爾なんぢに罪つみを犯をかしたるが爲ために天てん閉とぢて雨あめ无なからんに彼等かれら若もし此處このところにむかひて祈いのり爾なんぢの名なを崇あがめ爾なんぢが彼等かれらを苦くるしめたまふときに其その罪つみを離はなれなば 36 爾なんぢ天てんにおいて聽きき爾なんぢの僕しもべ等ら爾なんぢの民たみイスラエルの罪つみを赦ゆるしたまへ爾なんぢ彼等かれらに其その步あゆむべき善よき道󠄃みちを敎をしへたまふ時ときは爾なんぢが爾なんぢの民たみに與あたへて產業さんげふとなさしめたまひし爾なんぢの地ちに雨あめを降󠄄くだしたまへ

37 若もし國くにに饑󠄃饉ききんあるか若もしくは疫病やきびやう枯死ふけ朽腐くさり噬くひ亡ほろぼす蝗蟲いなごあるか若もしくは其その敵てき國くににいりて彼等かれらを其その門もんに圍󠄃かこむか如何いかなる災害󠄅わざはひ如何いかなる病疾やまひあるも 38 若もし一人ひとりか或あるひは爾なんぢの民たみイスラエル皆みな各おの〳〵己おのれの心こゝろの災わざはひを知しりて此この家いへに向むかひて手てを舒のべなば其人そのひと如何いかなる祈禱いのり如何いかなる懇願ねがひを爲なすとも 39 爾なんぢの居處すみかなる天てんに於おいて聽きゝて赦ゆるし行おこなひ各おの〳〵の人ひとに其心そのこころを知しり給たまふ如ごとく其その道󠄃々みち〳〵にしたがひて報むくい給たまへ其そは爾なんぢのみ凡すべての人ひとの心こゝろを知しりたまへばなり〘488㌻〙 40 爾なんぢかく彼等かれらをして爾なんぢが彼等かれらの父󠄃祖せんぞに與あたへたまへる地ちに居をる日ひに常つねに爾なんぢを畏おそれしめたまへ

41 且かつ又󠄂また爾なんぢの民たみイスラエルの者ものにあらずして爾なんぢの名なのために遠󠄄とほき國くにより來きたる異邦󠄆人ことくにびとは 42 (其そは彼等かれら爾なんぢの大おほいなる名なと强つよき手てと伸のべたる腕うでを聞きゝおよぶべければなり)若もし來きたりて此この家いへにむかひて祈いのらば
 636㌻ 
43 爾なんぢの居處すみかなる天てんに於おいて聽きき凡すべて異邦󠄆人ことくにびとの爾なんぢに龥よび求もとむる如ごとく爲なしたまへ爾なんぢかく地ちの諸すべての民たみをして爾なんぢの名なをしらしめ爾なんぢの民たみイスラエルのごとく爾なんぢを畏おそれしめ又󠄂また我わが建󠄄たてたる此この家いへは爾なんぢの名なをもて稱󠄄呼となへらるるといふことを知しらしめ給たまへ

44 爾なんぢの民たみ其その敵てきと戰たゝかはんとて爾なんぢの遣󠄃つかはしたまふ所󠄃ところに出いでたる時とき彼等かれら若もし爾なんぢが選󠄄えらみたまへる城󠄃まちとわが爾なんぢの名なのために建󠄄たてたる家いへの方かたに向むかひてヱホバに祈いのらば 45 爾なんぢ天てんにおいて彼等かれらの祈禱いのりと懇願ねがひを聽きゝて彼等かれらを助たすけたまへ

46 人ひとは罪つみを犯をかさざる者ものなければ彼等かれら爾なんぢに罪つみを犯をかすことありて爾なんぢ彼等かれらを怒いかり彼等かれらを其その敵てきに付わたし敵てきかれらを虜とりことして遠󠄄とほき近󠄃ちかきを諭󠄄いはず敵てきの地ちに引ひきゆかん時ときは 47 若もし彼等かれら虜とらはれゆきし地ちにおいて自みづから顧󠄃かへりみて悔くい己おのれを虜とらへゆきし者ものの地ちにて爾なんぢに願ねがひて我儕われら罪つみを犯をかし悖もとれる事ことを爲なしたり我儕われら惡あくを行おこなひたりと言いひ 48 己おのれを虜とらへゆきし敵てきの地ちにて一いつ心しん一いち念ねんに爾なんぢに歸かへり爾なんぢが其その父󠄃祖せんぞに與あたへたまへる地ち爾なんぢが選󠄄えらみたまへる城󠄃まちとわが爾なんぢの名なのために建󠄄たてたる家いへの方かたに向むかひて爾なんぢに祈いのらば 49 爾なんぢの居處すみかなる天てんにおいて爾なんぢ彼等かれらの祈禱いのりと懇願ねがひを聽きゝてかれらを助たすけ 50 爾なんぢの民たみの爾なんぢに對むかひて犯をかしたる事ことと爾なんぢに對むかひて過󠄃あやまてる其その凡すべての罪過󠄃あやまちを赦ゆるし彼等かれらを虜とらへゆける者ものの前󠄃まへにて彼等かれらに憐あはれみを得えさせ其その人々ひと〴〵をして彼等かれらを憐あはれましめたまへ 51 其そは彼等かれらは爾なんぢがエジプトより即すなはち鐵てつの鑪かまどの中うちよりいだしたまひし爾なんぢの民たみ爾なんぢの產業さんげふなればなり 52 願ねがはくは僕しもべの祈禱ねがひと爾なんぢの民たみイスラエルの祈願ねがひに爾なんぢの目めを開ひらきて凡すべて其その爾なんぢに龥よび求もとむる所󠄃ところを聽きゝたまへ 53 其そは爾なんぢ彼等かれらを地ちの凡すべての民たみの中うちより別わかちて爾なんぢの產業さんげふとなしたまへばなり神かみヱホバ爾なんぢが我儕われらの父󠄃祖せんぞをエジプトより導󠄃みちびき出いだせし時ときモーセによりて言いひ給たまひし如ごとし

54 ソロモン此この祈禱いのりと祈願ねがひを悉こと〴〵くヱホバに祈いのり終󠄃をはりし時とき其その天てんにむかひて手てを舒のべ膝ひざを屈かがめ居ゐたるを止やめてヱホバの壇だんのまへより起󠄃たちあがり
 637㌻ 
55 立たちて大おほいなる聲こゑにてイスラエルの凡すべての會衆くわいしうを祝しゆくして言いひけるは 56 ヱホバは譽ほむべきかなヱホバは凡すべて其その言いひたまひし如ごとく其その民たみイスラエルに太平󠄃たいへいを與あたへたまへり其その僕しもべモーセによりて言いひたまひし其その善言よきことばは皆みな一ひとつも違󠄇たがはざりき〘489㌻〙 57 願ねがはくは我儕われらの神かみヱホバ我儕われらの父󠄃祖せんぞと偕ともに在いませしごとく我儕われらとともに在いませ我儕われらを離はなれたまふなかれ我儕われらを棄すてたまふなかれ 58 願ねがはくは我儕われらの心こゝろをおのれに傾かたむけたまひて其その凡すべての道󠄃みちに步あゆましめ其その我儕われらの父󠄃祖せんぞに命めいじたまひし誡命いましめと法憲のりと律例さだめを守まもらしめたまへ 59 願ねがはくはヱホバの前󠄃まへにわが願ねがひし是等これらの言ことば日夜よるひるわれらの神かみヱホバに近󠄃ちかくあれ而しかしてヱホバ日々ひびの事ことに僕しもべを助たすけ其その民たみイスラエルを助たすけたまへ 60 斯かくして地ちの諸もろ〳〵の民たみにヱホバの神かみなることと他ほかに神かみなきことを知しらしめたまへ 61 されば爾等なんぢら我儕われらの神かみヱホバとともにありて今日こんにちの如ごとく爾なんぢらの心こゝろを完全󠄃まつたうしヱホバの法憲のりに步あゆみ其その誡命いましめを守まもるべしと

62 斯かくて王わうおよび王わうと偕ともにありしイスラエル皆みなヱホバのまへに犧牲いけにへを献さゝげたり 63 ソロモン酬恩祭しうおんさいの犧牲いけにへを献さゝげたり即すなはち之これをヱホバに献さゝぐ其その牛うし二萬まん二千せん羊ひつじ十二萬まんなりき斯かく王わうとイスラエルの子孫ひと〴〵皆みなヱホバの家いへを開ひらけり 64 其その日ひに王わうヱホバの家いへの前󠄃まへなる庭󠄄にはの中なかを聖󠄃別きよめ其處そこにて燔祭はんさいと禴祭やくさいと酬恩祭しうおんさいの脂あぶらとを献さゝげたり是こはヱホバの前󠄃まへなる銅あかがねの壇だん小ちひさくして燔祭はんさいと禴祭やくさいと酬恩祭しうおんさいの脂あぶらとを受うくるにたらざりしが故ゆゑなり 65 其時そのときソロモン七日なぬかに七日なぬか合あはせて十じふ四よつ日か我儕われらの神かみヱホバのまへに節󠄄筵いはひを爲なせりイスラエルの大おほいなる會衆くわいしうハマテの入處いりくちよりエジプトの河かはにいたるまで悉こと〴〵く彼かれと偕ともにありき 66 第八日やうかめにソロモン民たみを歸かへせり民たみは王わうを祝しゆくしヱホバが其その僕しもべダビデと其その民たみイスラエルに施ほどこしたまひし諸もろ〳〵の恩惠めぐみのために喜よろこび且かつ心こゝろに樂たのしみて其その天てん幕まくに往󠄃ゆけり
 638㌻ 

第9章

1 ソロモン、ヱホバの家いへと王わうの家いへを建󠄄たつる事ことを終󠄃をへ且かつ凡すべてソロモンが爲なさんと欲ほつし望󠄇のぞみを遂󠄅とげし時とき 2 ヱホバ再ふたゝびソロモンに甞かつてギベオンにて顯現あらはれたまひし如ごとくあらはれたまひて 3 彼かれに言いひたまひけるは我われは爾なんぢが我われまへに願ねがひし祈禱いのりと祈願ねがひを聽きゝたり我われ爾なんぢが建󠄄たてたる此この家いへを聖󠄃別きよめてわが名なを永ながく其處そこに置おくべし且かつわが目めとわが心こゝろは恒つねに其處そこにあるべし 4 爾なんぢ若もし爾なんぢの父󠄃ちゝダビデの步あゆみし如ごとく心こゝろを完まつたうして正たゞしく我わが前󠄃まへに步あゆみわが爾なんぢに命めいじたる如ごとく凡すべて行おこなひてわが憲法のりと律例さだめを守まもらば 5 我われは爾なんぢの父󠄃ちゝダビデに吿つげてイスラエルの位くらゐに上のぼる人ひと爾なんぢに缺かくること無なかるべしと言いひしごとく爾なんぢのイスラエルに王わうたる位くらゐを固かたうすべし 6 若もし爾等なんぢら又󠄂または爾等なんぢらの子孫しそん全󠄃まつたく轉そむきて我われにしたがはずわが爾等なんぢらのまへに置おきたるわが誡命いましめと法憲のりを守まもらずして往󠄃ゆきて他ほかの神かみに事つかへ之これを拜をがまば 7 我われイスラエルをわが與あたへたる地ちの面おもてより絕たゝん又󠄂またわが名なのために我わが聖󠄃別きよめたる此この家いへをば我われわがまへより投なげ棄すてんしかしてイスラエルは諸もろ〳〵の民たみの中うちに諺語ことわざとなり嘲󠄂笑あざけりとなるべし〘490㌻〙 8 且かつ又󠄂また此この家いへは高たかくあれども其その傍かたはらを過󠄃すぐる者ものは皆みな之これに驚おどろき嘶うそぶきて言いはんヱホバ何故なにゆゑに此この地ちに此この家いへに斯かく爲なしたまひしやと 9 人ひと答こたへて彼等かれらは己おのれの父󠄃祖せんぞをエジプトの地ちより導󠄃みちびき出いだせし其その神かみヱホバを棄すてて他ほかの神かみに附つき從したがひ之これを拜をがみ之これに事つかへしに因よりてヱホバ此この凡すべての害󠄅がい惡あくを其その上うへに降󠄄くだせるなりと言いはん

10 ソロモン二十年ねんを經へて二ふたつの家いへ即すなはちヱホバの家いへと王わうの家いへを建󠄄たてをはりヒウムにガリラヤの地ちの城󠄃邑まち二十を與あたへたり 11 其そはツロの王わうヒラムはソロモンに凡すべて其その望󠄇のぞみに循したがひて香柏かうはくと松󠄃まつの木きと金きんを供給おくりたればなり 12 ヒラム、ツロより出いでてソロモンが己おのれに與あたへたる諸邑まち〳〵を見しめしに其その目めに善よからざりければ 13 我わが兄第きやうだいよ爾なんぢが我われに與あたへたる此これ等らの城󠄃邑まちは何なになるやといひて之これをカブルの地ちとなづけたり其その名な今日こんにちまでのこる 14 甞かつてヒラムは金きん百ひやく二十タラントを王わうに遣󠄃おくれり
 639㌻ 

15 ソロモン王わうの徴募ちようぼ人にんを興おこせし事ことは是これなり即すなはちヱホバの家いへと自己おのれの家いへとミロとエルサレムの石垣いしがきとハゾルとメギドンとゲゼルを建󠄄たてんが爲ためなりき 16 エジプトの王わうパロ嘗かつて上のぼりてゲゼルを取とり火ひを以もて之これを燬やき其その邑まちに住󠄃すめるカナン人びとを殺ころし之これをソロモンの妻つまなる其その女むすめに與あたへて粧奩󠄂おくりものと爲なせり 17 ソロモン、ゲゼルと下しもベテホロンと 18 バアラと國くにの野のにあるタデモル 19 及およびソロモンの有󠄃たもてる府庫くらの諸邑まち〳〵其その戰車いくさぐるまの諸邑まち〳〵其その騎兵きへいの諸邑まち〳〵並ならびにソロモンがエルサレム、レバノンおよび其その凡すべての領地りやうちに於おいて建󠄄たてんと欲ねがひし者ものを盡こと〴〵く建󠄄たてたり 20 凡すべてイスラエルの子孫しそんに非あらざるアモリ人びとヘテ人びとペリジ人びとヒビ人びとヱブス人びとの遺󠄃存のこれる者もの 21 其その地ちに在ありて彼等かれらの後あとに遺󠄃存のこれる子孫しそん即すなはちイスラエルの子孫ひと〴〵の滅ほろぼし盡つくすことを得えざりし者ものにソロモン奴隸どれいの徴募ちようぼを行おこなひて今日こんにちに至いたる 22 然しかれどもイスラエルの子孫ひと〴〵をばソロモン一人ひとりも奴隸どれいと爲なさざりき其そは彼等かれらは軍人いくさびと彼かれの臣僕けらい牧伯つかさ大將たいしやうたり戰いくさ車ぐるまと騎兵きへいの長かしらたればなり

23 ソロモンの工事こうじを管理つかさどれる首かしらなる官吏󠄄くわんりは五百ひやく五十人にんにして工事こうじに働はたらく民たみを治をさめたり

24 爰こゝにパロの女むすめダビデの城󠄃まちより上のぼりてソロモンが彼かれのために建󠄄たてたる家いへに至いたる其時そのときにソロモン、ミロを建󠄄たてたり

25 ソロモン、ヱホバに築きづきたる壇だんの上うへに年としに三次󠄄みたび燔祭はんさいと酬恩祭しうおんさいを献さゝげ又󠄂またヱホバの前󠄃まへなる壇だんに香かうを焚たけりソロモン斯かく家いへを全󠄃まつたうせり〘491㌻〙

26 ソロモン王わうエドムの地ち紅海こうかいの濱はまに於おいてエラテの邊󠄎ほとりなるエジオンゲベルにて船󠄄ふね數󠄄すう雙󠄂さうを造󠄃つくれり 27 ヒラム海うみの事ことを知しれる舟ふな人びとなる其その僕しもべをソロモンの僕しもべと偕ともに其その船󠄄ふねにて遣󠄃つかはせり 28 彼等かれらオフルに至いたり其處そこより金きん四百ひやく二十タラントを取とりてこれをソロモン王わうの所󠄃ところに携もち來きたる
 640㌻ 

第10章

1 シバの女王によわうヱホバの名なに關かかはるソロモンの風聞うはさを聞きき及および難問なんもんを以もてソロモンを試こゝろみんとて來きたれり 2 彼かれ甚はなはだ多おほくの部從ともまはり香物かうもつと甚はなはだ多おほくの金きんと寳石たまを負󠄅おふ駱駝らくだを從したがへてエルサレムに至いたる彼かれソロモンの許もとに來きたり其心そのこころにある所󠄃ところを悉こと〴〵く之これに言いひたるに 3 ソロモン彼かれに其その凡すべての事ことを吿つげたり王わうの知しらずして彼かれに吿つげざる事こと無なかりき 4 シバの女王によわうソロモンの諸もろ〳〵の智慧󠄄ちゑと其その建󠄄たてたる家いへと 5 其その席せきの食󠄃物しよくもつと其その臣僕けらいの列なみ坐ゐる事ことと其その侍臣そばつかへの伺候たちをることおよび彼等かれらの衣服󠄃ころもと其その酒人さかびとと其そのヱホバの家いへに上のぼる階級はしごとを見みて全󠄃まつたく其その氣きを奪うばはれたり 6 彼かれ王わうにいひけるは我わが自己おのれの國くににて爾なんぢの行爲わざと爾なんぢの智慧󠄄ちゑに付ついて聞きゝたる言ことばは眞󠄃實まことなりき 7 然されど我われ來きたりて目めに見みるまでは其その言ことばを信しんぜざりしが今いま視みるに其その半󠄃なかばも我われに聞きこえざりしなり爾なんぢの智慧󠄄ちゑと昌盛󠄃さかえはわが聞きゝたる風聞うはさに越こゆ 8 常つねに爾なんぢの前󠄃まへに立たちて爾なんぢの智慧󠄄ちゑを聽きく是等これらの人ひと爾なんぢの臣僕けらいは幸福さいはひなるかな 9 爾なんぢの神かみヱホバは讃ほむべきかなヱホバ爾なんぢを悅よろこび爾なんぢをイスラエルの位くらゐに上のぼらせたまへりヱホバ永久とこしなへにイスラエルを愛あいしたまふに因よりて爾なんぢを王わうとなして公󠄃道󠄃おほやけと義ただしきを行おこなはしめたまふなりと 10 彼かれ乃すなはち金きん百二十タラント及および甚はなはだ多おほくの香物かうもつと寳石たまとを王わうに饋おくれりシバの女王によわうのソロモン王わうに饋おくりたるが如ごとき多おほくの香物かうもつは重かさねて至いたらざりき

11 オフルより金きんを載のせ來きたりたるヒラムの船󠄄ふねは亦またオフルより多おほくの白檀󠄂びやくだんの木きと寳石たまとを運󠄃はこび來きたりければ 12 王わう白檀󠄂びやくだんの木きを以もてヱホバの家いへと王わうの家いへとに欄干らんかんを造󠄃つくり歌うた謠うたふ者もののために琴ことと瑟しつを造󠄃つくれり是かくの如ごとき白檀󠄂びやくだんの木きは至いたらざりき亦また今日こんにちまでも見みたることなし

13 ソロモン王わう王わうの例ならはしに循したがひてシバの女王によわうに物ものを饋おくりたる外ほかに又󠄂また彼かれが望󠄇のぞみに任まかせて凡すべて其その求もとむる物ものを饋おくれり斯かくて彼かれ其その臣僕しもべ等らとともに歸かへりて其その國くにに往󠄃ゆけり
 641㌻ 

14 偖さて一年ねんにソロモンの所󠄃ところに至いたれる金きんの重量めかたは六百ぴやく六十六タラントなり 15 外ほかに又󠄂また商買あきうどおよび商旅󠄃たびあきうどの交󠄄易かうえき並ならびにアラビヤの王等わうたちと國くにの知事つかさ等たちよりも至いたれり 16 ソロモン王わう展のべ金きんの大楯おほだて二百ひやくを造󠄃つくれり其その大楯おほだてには各おの〳〵六百ぴやくシケルの金きんを用もちひたり 17 又󠄂また展のべ金きんの干たて三百びやくを造󠄃つくれり一ひとつの干たてに三斤ぎんの金きんを用もちひたり王わう是等これらをレバノン森林もりの家いへに置おけり〘492㌻〙 18 王わう又󠄂また象牙󠄂ざうげをもて大おほいなる寳座くらゐを造󠄃つくり純金じゆんきんを以もて之これを蔽おほへり 19 其その寳座くらゐに六むつの階級きだあり寳座くらゐの後うしろに圓まろき頭あたまあり坐ざする處ところの兩りやう旁はうに扶手てかけありて扶手てかけの側わきに二ふたつの獅子しゝ立たてり 20 又󠄂また其その六むつの階級きだに十二の獅子しゝ此旁こなた彼旁かなたに立たてり是かくの如ごとき者ものを作つくれる國くにはあらざりき 21 ソロモン王わうの用もちひて飮のめる器うつはは皆みな金きんなり又󠄂またレバノン森林もりの家いへの器うつはも皆みな純金じゆんきんにして銀ぎんの物もの無なかりき銀ぎんはソロモンの世よには貴たふとまざりしなり 22 其そは王わう海うみにタルシシの船󠄄ふねを有󠄃もちてヒラムの船󠄄ふねと供ともにあらしめタルシシの船󠄄ふねをして三さん年ねんに一ひと度たび金銀きんぎん象牙󠄂ざうげ猿猴さるおよび孔雀くじやくを載のせて來きたらしめたればなり

23 抑そも〳〵ソロモン王わうは富有󠄃とみと智慧󠄄ちゑに於おいて天てん下かの諸すべての王わうよりも大おほいなりければ 24 天てん下か皆みな神かみがソロモンの心こゝろに授さづけたまへる智慧󠄄ちゑを聽きかんとてソロモンの面かほを見みんことを求もとめたり 25 人々ひと〴〵各おの〳〵其その禮物れいもつを携たづさへ來きたる即すなはち銀ぎんの器うつは金きんの器うつは衣服󠄃ころも甲冑よろひ香物かうもつ馬むま騾ら每歳とし〴〵定分󠄃さだまりありき

26 ソロモン戰車いくさぐるまと騎兵きへいを集あつめたるに戰車いくさぐるま千四百ひやく輛りやう騎兵きへい壱いち萬まん二千せんありきソロモン之これを戰車いくさぐるまの城󠄃邑まちに置おき或あるひはエルサレムにて王わうの所󠄃ところに置おけり 27 王わうエルサレムに於おいて銀ぎんを石いしの如ごとくに爲なし香柏かうはくを平󠄃地ひらちの桑くはの樹きの如ごとくに爲なして多おほく用もちひたり 28 ソロモンの馬むまを獲えたるはエジプトとコアよりなり即すなはち王わうの商賣あきうどコアより價値あたひを以もて取とれり 29 エジプトより上のぼり出いづる戰車いくさぐるま一いち輛りやうは銀ぎん六百ぴやくにして馬むまは百ひやく五十なりき斯かくのごとくヘテ人びとの凡すべての王等わうたちおよびスリアの王等わうたちのために其その手てをもて取とり出いだせり
 642㌻ 

第11章

1 ソロモン王わうパロの女むすめの外ほかに多おほくの外國ことくにの婦󠄃をんなを寵愛ちようあいせり即すなはちモアブ人びとアンモニ人びとエドミ人びとシドン人びとヘテ人びとの婦󠄃をんなを寵愛ちようあいせり 2 ヱホバ曾かつて是等これらの國民くにたみについてイスラエルの子孫ひと〴〵に言いひたまひけらく爾等なんぢらは彼等かれらと交󠄄まじはるべからず彼等かれらも亦また爾等なんぢらと交󠄄まじはるべからず彼等かれら必かならず爾等なんぢらの心こゝろを轉うつして彼等かれらの神々かみ〴〵に從したがはしめんとしかるにソロモン彼等かれらを愛あいして離はなれざりき 3 彼かれ妃公󠄃つまひめ主みや七百ひやく人にん嬪おもひもの三百びやく人にんあり其その妃ひめ等たち彼かれの心こゝろを轉うつせり 4 ソロモンの年とし老おいたる時とき妃つま等たち其心そのこころを轉移うつして他ほかの神かみに從したがはしめければ彼かれの心こゝろ其その父󠄃ちゝダビデの心こゝろの如ごとく其その神かみヱホバに全󠄃まつたからざりき 5 其そはソロモン、シドン人びとの神かみアシタロテに從したがひアンモニ人びとの惡にくむべき者ものなるモロクに從したがひたればなり 6 ソロモン斯かくヱホバの目めのまへに惡あくを行おこなひ其その父󠄃ちゝダビデの如ごとく全󠄃まつたくはヱホバに從したがはざりき 7 爰こゝにソロモン、モアブの憎にくむべき者ものなるケモシの爲ため又󠄂またアンモンの子孫ひと〴〵の憎にくむべき者ものなるモロクのためにエルサレムの前󠄃まへなる山やまに崇邱たかきところを築きづけり〘493㌻〙 8 彼かれ又󠄂また其その異邦󠄆ことくにの凡すべての妃つまの爲ためにも然しかせしかば彼等かれらは香かうを焚たきて己々おのれおのれの神かみを祭まつれり

9 ソロモンの心こゝろ轉うつりてイスラエルの神かみヱホバを離はなれしによりてヱホバ彼かれを怒いかりたまふヱホバ嘗かつて兩次󠄄ふたゝび彼かれに顯あらはれ 10 此事このことに付ついて彼かれに他ほかの神かみに從したがふべからずと命めいじたまひけるに彼かれヱホバの命めいじたまひし事ことを守まもらざりしなり 11 ヱホバ、ソロモンに言いひたまひけるは此事このこと爾なんぢにありしに因より又󠄂また汝なんぢわが契󠄅約けいやくとわが爾なんぢに命めいじたる法憲のりを守まもらざりしに因よりて我われ必かならず爾なんぢより國くにを裂さきはなして之これを爾なんぢの臣僕けらいに與あたふべし 12 然されど爾なんぢの父󠄃ちゝダビデの爲ために爾なんぢの世よには之これを爲なさざるべし我われ爾なんぢの子この手てより之これを裂さきはなさん 13 但たゞし我われは國くにを盡こと〴〵くは裂さきはなさずしてわが僕しもべダビデのために又󠄂またわが選󠄄えらみたるエルサレムのために一ひとつの支󠄂派󠄄わかれを爾なんぢの子こに與あたへんと

14 是こゝに於おいてヱホバ、エドミ人びとハダデを興おこしてソロモンの敵てきと爲なしたまふ彼かれはエドム王わうの裔すゑなり 15 曩さきにダビデ、エドムに事ことありし時とき軍ぐんの長かしらヨアブ上のぼりて其その戰死うちじにせし者ものを葬はうむりエドムの男をとこを盡こと〴〵く擊うち殺ころしける時ときに方あたりて
 643㌻ 
16 (ヨアブはエドムの男をとこを盡こと〴〵く絕たつまでイスラエルの群衆ぐんしうと偕ともに六む月󠄃つき其處そこに止とゞまれり) 17 ハダデ其その父󠄃ちゝの僕しもべなる數󠄄人すうにんのエドミ人びとと共ともに逃󠄄にげてエジブトに往󠄃ゆかんとせり時ときにハダデは尙なほ小こ童子わらべなりき 18 彼等かれらミデアンを起󠄃たち出いでてバランに至いたりパランより人ひとを伴󠄃ともなひてエジプトに往󠄃ゆきエジプトの王わうパロに詣いたるにバロ彼かれに家いへを與あたへ食󠄃糧しよくりやうを定さだめ且かつ土地とちを與あたへたり 19 ハダデ大おほいにパロの心こゝろにかなひしかばパロ己おのれの妻つまの妹いもうと即すなはち王妃きさきタペネスの妹いもうとを彼かれに妻めあはせり 20 タペネスの妹いもうと彼かれに男子をとこのこゲヌバテを生うみければタペネス之これをパロの家いへの中うちにて乳󠄃ち離ばなれせしむゲヌバテ、パロの家いへにてパロの子この中うちにありき 21 ハダデ、エジプトに在ありてダビデの其その先祖せんぞと偕ともに寢ねむりたると軍ぐんの長かしらヨアブの死しにたるを聞きゝしかばハダデ、パロに言いひけるは我われを去さらしめてわが國くにに往󠄃ゆかしめよと 22 パロ彼かれにいひけるは爾なんぢ我われとともにありて何なにの缺かけたる處ところありてか爾なんぢの國くにに往󠄃ゆかん事ことを求もとむる彼かれ言いふ何なにも無なし然されどもねがはくは我われを去さらしめよ去さらしめよ

23 神かみ父󠄃ちゝエリアダの子こレゾンを興おこしてソロモンの敵てきとなせり彼かれは其その主人しゆじんゾバの王わうハダデゼルの許もとを逃󠄄にげさりたる者ものなり 24 ダビデがゾバの人ひとを殺ころしたる時ときに彼かれ人ひとを自己おのれに集あつめて一隊󠄄ひとくみの首領かしらとなりしが彼等かれらダマスコに往󠄃ゆきて彼處そこに住󠄃すみダマスコを治をさめたり〘494㌻〙 25 ハダデが爲なしたる害󠄅がいの外ほかにレゾン、ソロモンの一いつ生しやうの間あひだイスラエルの敵てきとなれり彼かれイスラエルを惡にくみてスリアに王わうたりき

26 ゼレダのヱフラタ人びとネバテの子こヤラベアムはソロモンの僕けらいなりしが其その母はゝの名なはゼルヤと曰いひて嫠やもめ婦󠄃をんななりき彼かれも亦また其その手てを擧あげて王わうに敵てきす 27 彼かれが手てを擧あげて王わうに敵てきせし故ゆゑは此これなりソロモン、ミロを築きづき其その父󠄃ちゝダビデの城󠄃まちの損缺やぶれを塞ふさぎ居ゐたり 28 其人そのひとヤラベアムは大おほいなる能力ちからある者ものなりしかばソロモン此この少者わかきものが事ことに勤つとむるを見みて之これを立たててヨセフの家いへの凡すべての役つとめを督つかさどらしむ 29 其その頃ころヤラベアム、エルサレムを出いでし時ときシロ人びとなる預言者よげんしやアヒヤ路みちにて彼かれに遭󠄃あへり彼かれは新あたらしき衣服󠄃ころもを著きゐたりしが彼等かれら二人ふたりのみ野のにありき
 644㌻ 
30 アヒヤ其その著きたる新あたらしき衣服󠄃ころもを執とらへて之これを十じふ二に片きれに裂さき 31 ヤラベアムに言いひけるは爾なんぢ自みづから十と片きれを取とれイスラエルの神かみヱホバ斯かく言いひたまふ視みよ我われ國くにをソロモンの手てより裂さきはなして爾なんぢに十とをの支󠄂派󠄄わかれを與あたへん 32 (但たゞし彼かれはわが僕しもべダビデの故ゆゑに因より又󠄂またわがイスラエルの凡すべての支󠄂派󠄄わかれの中うちより選󠄄えらみたる城󠄃まちエルサレムの故ゆゑに因よりて一ひとつの支󠄂派󠄄わかれを有󠄃たもつべし) 33 其そは彼等かれら我われを棄すててシドン人びとの神かみアシタロテとモアブの神かみケモシとアンモンの子孫ひと〴〵の神かみモロクを拜をがみ其その父󠄃ちゝダビデの如ごとくわが道󠄃みちに步あゆみてわが目めに適󠄄かなふ事ことわが法のりとわが律例さだめを行おこなはざればなり 34 然しかれども我われは國くにを盡こと〴〵くは彼かれの手てより取とらざるべし我わが選󠄄えらみたるわが僕しもべダビデわが命令めいれいとわが法憲のりを守まもりたるに因よりて我われ彼かれが爲ためにソロモンを一いつ生しやうの間あひだ主きみたらしむべし 35 然されど我われ其その子この手てより國くにを取とりて其その十とをの支󠄂派󠄄わかれを爾なんぢに與あたへん 36 其その子こには我われ一ひとつの支󠄂派󠄄わかれを與あたへてわが僕しもべダビデをしてわが己おのれの名なを置おかんとてわがために擇えらみたる城󠄃まちエルサレムにてわが前󠄃まへに常つねに一ひとつの光明ひかりを有󠄃たもたしめん 37 我われ爾なんぢを取とらん爾なんぢは凡すべて爾なんぢの心こゝろの望󠄇のぞむ所󠄃ところを治をさめイスラエルの上うへに王わうとなるべし 38 爾なんぢ若もしわが爾なんぢに命めいずる凡すべての事ことを聽きゝて吾わが道󠄃みちに步あゆみわが目めに適󠄄かなふ事ことを爲なしわが僕しもべダビデが爲なせし如ごとく我わが法憲のりと誡命いましめを守まもらば我われ爾なんぢと偕ともにありてわがダビデのために建󠄄たてしごとく爾なんぢのために鞏固かたき家いへを建󠄄たててイスラエルを爾なんぢに與あたふべし 39 我われ之これがためにダビデの裔すゑを苦くるしめんされど永遠󠄄とこしなへには非あらじと 40 ソロモン、ヤラベアムを殺ころさんと求もとめければヤラベアム起󠄃たちてエジプトに逃󠄄遁󠄅のがれエジプトの王わうシシヤクに至いたりてソロモンの死しぬるまでエジプトに居ゐたり〘495㌻〙

41 ソロモンの其その餘ほかの行爲わざと凡すべて彼かれが爲なしたる事ことおよび其その智慧󠄄ちゑはソロモンの行爲わざの書しよに記しるさるるにあらすや 42 ソロモンのエルサレムにてイスラエルの全󠄃地ぜんちを治をさめたる日ひは四十年ねんなりき 43 ソロモン其その父󠄃祖せんぞと偕ともに寢ねむりて其その父󠄃ちゝダビデの城󠄃まちに葬はうむらる其その子こレハベアム之これに代かはりて王わうとなれり
 645㌻ 

第12章

1 爰こゝにレハベアム、シケムに往󠄃ゆけり其そはイスラエル皆みな彼かれを王わうと爲なさんとてシケムに至いたりたればなり 2 ネバテの子こヤラベアム尙なほエジブトに在ありて聞きけりヤラベアムはソロモン王わうの面かほをさけて逃󠄄にげさりエジプトに住󠄃居すみゐたるなり 3 時ときに人衆ひと〴〵人ひとを遣󠄃つかはして彼かれを招まねけり斯かくてヤラベアムとイスラエルの會衆くわいしう皆みな來きたりてレハベアムに吿つげて言いひけるは 4 汝なんぢの父󠄃ちゝ我儕われらの軛くびきを難かたくせり然しかれども爾なんぢ今いま爾なんぢの父󠄃ちゝの難かたき役つとめと爾なんぢの父󠄃ちゝの我儕われらに蒙かうむらせたる重おもき軛くびきを輕かろくせよ然しからば我儕われら爾なんぢに事つかへん 5 レハベアム彼等かれらに言いひけるは去さりて三日みつかを經へて再ふたゝび我われに來きたれと民たみ乃すなはち去されり

6 レハベアム王わう其その父󠄃ちゝソロモンの生いける間あひだ其その前󠄃まへに立たちたる老人らうじん等たちと計はかりていひけるは爾等なんぢら如何いかに敎をしへて此これ民たみに答こたへしむるや 7 彼等かれらレハベアムに吿つげて言いひけるは爾なんぢ若もし今日こんにち此この民たみの僕しもべとなり之これに事つかへて之これに答こたへ善よき言ことばを之これに語かたらば彼等かれら永ながく爾なんぢの僕しもべとなるべしと 8 然しかるに彼かれ老人らうじんの敎をしへし敎をしへを棄すて自己おのれと俱ともに生長そだちて己おのれのまへに立たつ少年せうねん等らと計はかれり 9 即すなはち彼等かれらに言いひけるは爾等なんぢら何なにを敎をしへて我儕われらをして此この我われに吿つげて爾なんぢの父󠄃ちゝの我儕われらに蒙かうむらせし軛くびきを輕かろくせよと言いふ民たみに答こたへしむるやと 10 彼かれと偕ともに生長そだちたる少年せうねん彼かれに吿つげていひけるは爾なんぢに吿つげて爾なんぢの父󠄃ちゝ我儕われらの軛くびきを重おもくしたれど爾なんぢこれを我儕われらのために輕かろくせよと言いひたる此この民たみに爾なんぢ斯かく言いふベし我わが小こ指ゆびはわが父󠄃ちゝの腰󠄃こしよりも太ふとし 11 またわが父󠄃ちゝ爾等なんぢらに重おもき軛くびきを負󠄅おはせたりしが我われは更󠄃さらに爾等なんぢらの軛くびきを重おもくせん我わが父󠄃ちゝは鞭むちにて爾等なんぢらを懲こらしたれども我われは蠍󠄂さそりをもて爾等なんぢらを懲こらさんと爾なんぢ斯かく彼等かれらに吿つぐべしと

12 ヤラベアムと民たみ皆みな王わうの吿つげて第三日みつかめに再ふたゝび我われに來きたれと言いひしごとく第三日みつかめにレハベアムに詣いたりしに 13 王わう荒々あら〳〵しく民たみに答こたへ老人らうじんの敎をしへし敎をしへを棄すて 14 少年せいねんの敎をしへの如ごとく彼等かれらに吿つげて言いひけるは我わが父󠄃ちゝは爾等なんぢらの軛くびきを重おもくしたりしが我われは更󠄃さらに爾等なんぢらの軛くびきを重おもくせん我わが父󠄃ちゝは鞭むちを以もて爾等なんぢらを懲こらしたれども我われは蠍󠄂さそりをもて爾等なんぢらを懲こらさんと
 646㌻ 
15 王わう斯かく民たみに聽きかざりき此事このことはヱホバより出いでたる者ものなり是こはヱホバその甞かつてシロ人びとアヒヤに由よりてネバテの子こヤラベアムに吿つげし言ことばをおこなはんとて爲なしたまへるなり〘496㌻〙

16 かくイスラエル皆みな王わうの己おのれに聽きかざるを見みたり是こゝにおいて民たみ王わうに答こたへて言いひけるは我儕われらダビデの中うちに何なにの分󠄃ぶんあらんやヱサイの子この中うちに產業さんげふなしイスラエルよ爾等なんぢらの天てん幕まくに歸かへれダビデよ今いま爾なんぢの家いへを視みよと而しかしてイスラエルは其その天てん幕まくに去さりゆけり 17 然しかれどもユダの諸邑まち〳〵に住󠄃すめるイスラエルの子孫ひと〴〵の上うへにはレハベアム其その王わうとなれり 18 レハベアム王わう徴募ちやうぼ頭がしらなるアドラムを遣󠄃つかはしけるにイスラエル皆みな石いしにて彼かれを擊うちて死しなしめたればレハベアム王わう急󠄃いそぎて其その車くるまに登のぼりエルサレムに逃󠄄にげたり 19 斯かくイスラエル、ダビデの家いへに背そむきて今日こんにちにいたる 20 爰こゝにイスラエル皆みなヤラベアムの歸かへりしを聞きゝて人ひとを遣󠄃つかはして彼かれを集會しふくわいに招まねき彼かれをイスラエルの全󠄃家ぜんかの上うへに王わうと爲なせりユダの支󠄂派󠄄わかれの外ほかはダビデの家いへに從したがふ者ものなし

21 ソロモンの子こレハベアム、エルサレムに至いたりてユダの全󠄃家ぜんかとベニヤミンの支󠄂派󠄄わかれの者もの即すなはち壯年さかりの武夫つはもの十八萬まんを集あつむ斯かくしてレハベアム國くにを己おのれに皈かへさんがためにイスラエルの家いへと戰たゝかはんとせしが 22 神かみの言ことば神かみの人ひとシマヤに臨のぞみて曰いはく 23 ソロモンの子こユダの王わうレハベアムおよびユダとベニヤミンの全󠄃家ぜんか並ならびに其その餘ほかの民たみに吿つげて言いふべし 24 ヱホバ斯かく言いふ爾等なんぢら上のぼるべからず爾等なんぢらの兄弟きやうだいなるイスラエルの子孫ひと〴〵と戰たゝかふべからず各人おの〳〵其その家いへに歸かへれ此事このことは我われより出いでたるなりと彼等かれらヱホバの言ことばを聽ききヱホバの言ことばに循したがひて轉かへり去さりぬ

25 ヤラベアムはエフライムの山地やまちにシケムを建󠄄たてて其處そこに住󠄃すみ又󠄂また其所󠄃そこより出いでてペヌエルを建󠄄たてたり 26 爰こゝにヤラベアム其心そのこころに謂いひけるは國くには今いまダビデの家いへに歸かへらん
 647㌻ 
27 若もし此この民たみエルサレムにあるヱホバの家いへに禮物そなへものを献さゝげんとて上のぼらば此この民たみの心こゝろユダの王わうなる其その主しゆレハベアムに歸かへりて我われを殺ころしユダの王わうレハベアムに歸かへらんと 28 是こゝに於おいて王わう計議はかりて二ふたつの金きんの犢こうしを造󠄃つくり人々ひと〴〵に言いひけるは爾なんぢらのエルサレムに上のぼること旣󠄁すでに足たれりイスラエルよ爾なんぢをエジブトの地ちより導󠄃みちびき上のぼりし汝なんぢの神かみを視みよと 29 而しかして彼かれ一ひとつをベテルに安すゑ一ひとつをダンに置おけり 30 此事このこと罪つみとなれりそは民たみダンに迄まで往󠄃ゆきて其その一ひとつの前󠄃まへに詣まうでたればなり 31 彼かれ又󠄂また崇邱たかきところの家いへを建󠄄たててレビの子孫ひと〴〵にあらざる凡そのつねの民たみを祭司さいしとなせり 32 ヤラベアム八月󠄃ぐわつに節󠄄期いはひを定さだめたり即すなはち其その月󠄃つきの十五日にちなりユダにある節󠄄期いはひに等ひとし而しかして壇だんの上うへに上のぼりたりベテルにて彼かれ斯かく爲なし其その作つくりたる犢こうしに禮物そなへものを献さゝげたり又󠄂また彼かれ其その造󠄃つくりたる崇邱たかきところの祭司さいしをベテルに立たてたり 33 かく彼かれ其そのベテルに造󠄃つくれる壇だんの上うへに八月󠄃ぐわつの十五日にちに上のぼれり是これは彼かれが己おのれの心こゝろより造󠄃つくり出いだしたる月󠄃つきなり而しかしてイスラエルの人々ひと〴〵のために節󠄄期いはひを定さだめ壇だんの上うへにのぼりて香かうを焚たけり〘497㌻〙

第13章

1 視みよ爰こゝに神かみの人ひとヱホバの言ことばに由よりてユダよりベテルに來きたれり時ときにヤラベアムは壇だんの上うへに立たちて香かうを焚たきゐたり 2 神かみの人ひと乃すなはちヱホバの言ことばを以もて壇だんに向むかひて呼よばはり言いひけるは壇だんよ壇だんよヱホバ斯かく言いひたまふ視みよダビデの家いへにヨシアと名なづくる一人ひとりの子こ生うまるべし彼かれ爾なんぢの上うへに香かうを焚たく所󠄃ところの崇邱たかきところの祭司さいしを爾なんぢの上うへに献さゝげん且かつ人ひとの骨ほね爾なんぢの上うへに燒やかれんと 3 是この日ひ彼かれ異蹟しるしを示しめして言いひけるは是これはヱホバの言いひたまへる事ことの異蹟しるしなり視みよ壇だんは裂さけ其その上うへにある灰󠄃はひは傾出こぼれんと 4 ヤラベアム王わう神かみの人ひとがベテルにある壇だんに向むかひて呼よばはりたる言ことばを聞きける時とき其その手てを壇だんより伸のばし彼かれを執とらへよと言いひけるが其その彼かれに向むかひて伸のばしたる手て枯かれて再ふたゝび屈縮ちぢむることを得えざりき 5 しかして神かみの人ひとがヱホバの言ことばを以もて示しめしたる異蹟しるしの如ごとく壇だんは裂さけ灰󠄃はひは壇だんより傾出こぼれたり 6 王わう答こたへて神かみの人ひとに言いひけるは請󠄃こふ爾なんぢの神かみヱホバの面かほを和なごめわが爲ために祈いのりてわが手てを本もとに復かへらしめよ神かみの人ひと乃すなはちヱホバの面かほを和なごめければ王わうの手て本もとに復かへりて前󠄃まへのごとくに成󠄃なれり
 648㌻ 
7 是こゝにおいて王わう神かみの人ひとに言いひけるは我われと與ともに家いへに來きたりて身みを息やすめよ我われ爾なんぢに禮物れいもつを與あたへんと 8 神かみの人ひと王わうに言いひけるは爾なんぢ假令たとひ爾なんぢの家いへの半󠄃なかばを我われに與あたふるも我われは爾なんぢとともに入いらじ又󠄂また此この所󠄃ところにてパンを食󠄃くはず水みづを飮のまざるべし 9 其そはヱホバの言ことば我われにパンを食󠄃くらふなかれ水みづを飮のむなかれ又󠄂また爾なんぢが往󠄃ゆける途󠄃みちより歸かへるなかれと命めいじたればなりと 10 斯かく彼かれ他ほかの途󠄃みちを往󠄃ゆき自己おのれがベテルに來きたれる途󠄃みちよりは歸かへらざりき

11 爰こゝにベテルに一人ひとりの老おいたる預言よげん者しや住󠄃すみゐたりしが其その子等こら來きたりて是この日ひ神かみの人ひとがベテルにて爲なしたる諸事ことどもを彼かれに宣のべたり亦また神かみの人ひとの王わうに言いひたる言ことばをも其その父󠄃ちゝに宣のべたり 12 其その父󠄃ちゝ彼等かれらに彼かれは何いづれの途󠄃みちを往󠄃ゆきしやといふ其その子等こらユダより來きたりし神かみの人ひとの往󠄃ゆきたる途󠄃みちを見みたればなり 13 彼かれ其その子等こらに言いひけるは我わがために驢馬ろばに鞍くらおけと彼等かれら驢馬ろばに鞍くらおきければ彼かれ之これに乘のり 14 神かみの人ひとの後あとに往󠄃ゆきて橡かしの樹きの下したに坐ざするを見み之これにいひけるは汝なんぢはユダより來きたれる神かみの人ひとなるか其人そのひと然しかりと言いふ 15 彼かれ其人そのひとにいひけるは我われと偕ともに家いへに往󠄃ゆきてパンを食󠄃くらへ 16 其人そのひといふ我われは汝なんぢと偕ともに歸かへる能あたはず汝なんぢと偕ともに入いるあたはず又󠄂また我われは此處このところにて爾なんぢと偕ともにパンを食󠄃くはず水みづを飮のまじ 17 其そはヱホバの言ことば我われに爾なんぢ彼處かしこにてパンを食󠄃くらふなかれ水みづを飮のむなかれ又󠄂また爾なんぢが至いたれる所󠄃ところの途󠄃みちより歸かへり往󠄃ゆくなかれと言いひたればなりと〘498㌻〙 18 彼かれ其人そのひとにいひけるは我われも亦また爾なんぢの如ごとく預言者よげんしやなるが天てんの使󠄃つかひヱホバの言ことばを以もて我われに吿つげて彼かれを爾なんぢと偕ともに爾なんぢの家いへに携つれかへり彼かれにパンを食󠄃くらはしめ水みづを飮のましめよといへりと是これ其人そのひとを誑あざむけるなり 19 是こゝにおいて其人そのひと彼かれと偕ともに歸かへり其その家いへにてパンを食󠄃くらひ水みづを飮のめり

20 彼等かれらが席せきに坐いませし時ときヱホバの言ことば其人そのひとを携つれ歸かへりし預言者よげんしやに臨のぞみければ 21 彼かれユダより來きたれる神かみの人ひとに向むかひて呼よばはり言いひけるはヱホバ斯かく言いひたまふ爾なんぢヱホバの口くちに違󠄇そむき爾なんぢの神かみヱホバの爾なんぢに命めいじたまひし命令めいれいを守まもらずして歸かへり
 649㌻ 
22 ヱホバの爾なんぢにパンを食󠄃くらふなかれ水みづを飮のむなかれと言いひたまひし處ところにてパンを食󠄃くらひ水みづを飮のみたれば爾なんぢの屍しかばねは爾なんぢの父󠄃祖ふその墓はかに至いたらざるべしと 23 其人そのひとのパンを食󠄃くらひ水みづを飮のみし後のち彼かれ其人そのひとのため即すなはち己おのれが携つれ歸かへりたる預言者よげんしやのために驢馬ろばに鞍くらおけり 24 斯かくて其人そのひと往󠄃ゆきけるが獅子しゝ途󠄃みちにて之これに遇󠄃あひて之これを殺ころせり而しかして其その屍しかばねは途󠄃みちに棄すてられ驢馬ろばは其その傍かたはらに立たち獅子しゝも亦また其その屍しかばねの側かたはらに立たてり 25 人々ひと〴〵經過󠄃とほりて途󠄃みちに棄すてられたる屍しかばねと其その屍しかばねの側かたはらに立たてる獅子しゝを見みて來きたり彼かの老おいたる預言者よげんしやの住󠄃すめる邑まちにて語かたれり

26 彼人かのひとを途󠄃みちより携つれ歸かへりたる預言者よげんしや聞きゝて言いひけるは其それはヱホバの口くちに違󠄇そむきたる神かみの人ひとなりヱホバの彼かれに言いひたまひし言ことばの如ごとくヱホバ彼かれを獅子しゝに付わたしたまひて獅子しゝ彼かれを裂さき殺ころせりと 27 しかして其その子等こらに語かたりて言いひけるは我わがために驢馬ろばに鞍くらおけと彼等かれら鞍くらおきければ 28 彼かれ往󠄃ゆきて其その屍しかばねの途󠄃みちに棄すてられ驢馬ろばと獅子しゝの其その屍しかばねの傍かたはらに立たてるを見みたり獅子しゝは屍しかばねを食󠄃くらはず驢馬ろばをも裂さかざりき 29 預言者よげんしや乃すなはち神かみの人ひとの屍しかばねを取とりあげて之これを驢馬ろばに載のせて携もち歸かへれりしかして其その老おいたる預言者よげんしや邑まちに入いり哀哭かなしみて之これを葬はうむれり 30 即すなはち其その屍しかばねを自己おのれの墓はかに置をさめ皆みな之これがために嗚呼あゝわが兄弟きやうだいよといひて哀哭かなしめり 31 彼人かのひとを葬はうむりし後のち彼かれ其その子等こらに語かたりて言いひけるは我わが死しにたる時ときは神かみの人ひとを葬はうむりたる墓はかに我われを葬はうむりわが骨ほねを彼かれの骨ほねの側そばに置をさめよ 32 其そは彼かれがヱホバの言ことばを以もてベテルにある壇だんにむかひ又󠄂またサマリアの諸邑まち〳〵に在ある崇邱たかきところの凡すべての家いへに向むかひて呼よばはりたる言ことばは必かならず成󠄃なるべければなり

33 斯この事ことの後のちヤラベアム其その惡あしき途󠄃みちを離はなれ歸かへらずして復また凡よのつねの民たみを崇邱たかきところの祭司さいしと爲なせり即すなはち誰たれにても好このむ者ものは之これを立たてければ其人そのひとは崇邱たかきところの祭司さいしと爲なれり 34 此事このことヤラベアムの家いへの罪戻󠄃つみとなりて遂󠄅つひに之これをして地ちの表面おもてより消󠄃失きえうせ滅亡ほろぶるに至いたらしむ〘499㌻〙
 650㌻ 

第14章

1 當時そのころヤラベアムの子こアビヤ疾やみゐたり 2 ヤラベアム其その妻つまに言いひけるは請󠄃こふ起󠄃たちて裝すがたを改かへ人ひとをして汝なんぢがヤラベアムの妻つまなるを知しらしめずしてシロに往󠄃ゆけ彼處かしこにわが此この民たみの王わうとなるべきを我われに吿つげたる預言者よげんしやアヒヤをる 3 汝なんぢの手てに十とをのパン及および菓くわ子こと一いち瓶びんの蜜みつを取とりて彼かれの所󠄃ところに往󠄃ゆけ彼かれ汝なんぢに此この子この如何いかになるかを示しめすべしと 4 ヤラベアムの妻つま是かく爲なし起󠄃たちてシロに往󠄃ゆきアヒヤの家いへに至いたりしがアヒヤは年齡としのために其その目め凝かたまりて見みることを得えざりき 5 ヱホバ、アヒヤにいひたまひけるは視みよヤラベアムの妻つま其その子こ疾やめるに因よりて其それに付つきて汝なんぢに一ひとつの事ことを諮󠄄たづねんとて來きたる汝なんぢ斯々かく〳〵彼かれに言いふべし其そは彼かれ入いり來きたる時とき其その身みを他ほかの人ひととすべければなり

6 彼かれが戶との所󠄃ところに入いり來きたれる時ときアヒヤ其その履あし聲おとを聞きゝて言いひけるはヤラベアムの妻つま入いれよ汝なんぢ何なんぞ其その身みを他ほかの人ひととするや我われ汝なんぢに嚴酷󠄃きびしき事ことを吿つぐるを命めいぜらる 7 往󠄃ゆきてヤラベアムに吿つぐべしイスラエルの神かみヱホバ斯かく言いひたまふ我われ汝なんぢを民たみの中うちより擧あげ我民わがたみイスラエルの上うへに汝なんぢを君きみとなし 8 國くにをダビデの家いへより裂さき離はなして之これを汝なんぢに與あたへたるに汝なんぢは我わが僕しもべダビデの我わが命令めいれいを守まもりて一いつ心しんに我われに從したがひ唯たゞわが目めに適󠄄かなふ事ことのみを爲なせしが如ごとくならずして 9 汝なんぢの前󠄃まへに在ありし凡すべての者ものよりも惡あくを爲なし往󠄃ゆきて汝なんぢのために他ほかの神かみと鑄いたる像󠄃ざうを造󠄃つくり我わが怒いかりを激おこし我われを汝なんぢの背後うしろに棄すてたり 10 是故このゆえに視みよ我われヤラベアムの家いへに災害󠄅わざはひを下くだしヤラベアムに屬ぞくする男をとこはイスラエルにありて繋つながれたる者ものも繋つながれざる者ものも盡こと〴〵く絕たち人ひとの塵埃あくたを殘のこりなく除のぞくがごとくヤラベアムの家いへの後あとを除のぞくべし 11 ヤラベアムに屬ぞくする者ものの邑まちに死しぬるをば犬いぬ之これを食󠄃くらひ野のに死しぬるをば天空󠄃そらの鳥とり之これを食󠄃くらはんヱホバ之これを語いひたまへばなり 12 爾なんぢ起󠄃たちて爾なんぢの家いへに往󠄃ゆけ爾なんぢの足あしの邑まちに入いる時とき子こは死しぬべし 13 而しかしてイスラエル皆みな彼かれのために哀かなしみて彼かれを葬はうむらんヤラベアムに屬ぞくする者ものは唯たゞ是これのみ墓はかに入いるべし其そはヤラベアムの家いへの中うちにて彼かれはイスラエルの神かみヱホバに向むかひて善よき意おもひを懷いだけばなり 14 ヱホバ、イスラエル上うへに一人ひとりの王わうを興おこさん彼かれ其その日ひにヤラベアムの家いへを斷絕たつべし但たゞし何いづれの時ときなるか今いま即すなはち是これなり
 651㌻ 
15 又󠄂またヱホバ、イスラエルを擊うちて水みづに搖撼ゆるぐ葦あしの如ごとくになしたまひイスラエルを其その父󠄃祖せんぞに賜たまひし此この善よき地ちより拔ぬき去さりて之これを河かはの外さきに散ちらしたまはん彼等かれら其そのアシラ像󠄃ざうを造󠄃つくりてヱホバの怒いかりを激おこしたればなり 16 ヱホバ、ヤラベアムの罪つみの爲ためにイスラエルを棄すてたまふべし彼かれは罪つみを犯をかし又󠄂またイスラエルに罪つみを犯をかさしめたりと〘500㌻〙

17 ヤラベアムの妻つま起󠄃たちて去さりテルザに至いたりて家いへの閾しきゐに臻いたれる時とき子こは死しねり 18 イスラエル皆みな彼かれを葬はうむり彼かれの爲ために哀かなしめりヱホバの其その僕しもべ預言者よげんしやアヒヤによりて言いひたまへる言ことばの如ごとし

19 ヤラベアムの其その餘ほかの行爲わざ彼かれが如何いかに戰たゝかひしか如何いかに世よを治をさめしかは視みよイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさる 20 ヤラベアムの王わうたりし日ひは二十二年ねんなりき彼かれ其その父󠄃祖せんぞと偕ともに寢ねむりて其その子こナダブ之これに代かはりて王わうとなれり

21 ソロモンの子こレハベアムはユダに王わうたりきレハベアムは王わうと成󠄃なれる時とき四十一歳さいなりしがヱホバの其その名なを置おかんとてイスラエルの諸すべての支󠄂派󠄄わかれの中うちより選󠄄えらみたまひし邑まちなるエルサレムにて十七年ねん王わうたりき其その母はゝの名なはナアマといひてアンモニ人びとなり 22 ユダ其その父󠄃祖せんぞの爲なしたる諸すべての事ことに超こえてヱホバの目めの前󠄃まへに惡あくを爲なし其その犯をかしたる罪つみに由よりてヱホバの震怒いかりを激おこせり 23 其そは彼等かれらも諸すべての高山たかやまの上うへと諸すべての靑あを木きの下したに崇邱たかきところと碑ひとアシラ像󠄃ざうを建󠄄たてたればなり 24 其その國くにには亦また男なん色しよくを行おこなふ者ものありき彼等かれらはヱホバがイスラエルの子孫ひと〴〵の前󠄃まへより逐󠄃おひ攘はらひたまひし國民くにたみの中うちにありし諸すべての憎にくむべき事ことを傚ならひ行おこなへり

25 レハベアム王わうの第だい五年ねんにエジプトの王わうシシヤク、エルサレムに攻せめ上のぼり 26 ヱホバの家いへの寳物たからと王わうの家いへの寳物たからを奪うばひたり即すなはち盡こと〴〵く之これを奪うばひ亦またソロモンの造󠄃つくりたる金きんの楯たてを皆みな奪うばひたり
 652㌻ 
27 レハベアム王わう其その代かはりに銅あかがねの楯たてを造󠄃つくりて王わうの家いへの門もんを守まもる侍衛󠄅じゑいの長かしらの手てに付わたせり 28 王わうのヱホバの家いへに入いる每ごとに侍衛󠄅じゑい之これを負󠄅おひ復また之これを侍衛󠄅じゑいの房󠄃いへに携もち歸かへれり

29 レハベアムの其その餘ほかの行爲わざと其その凡すべて爲なしたる事ことはユダの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記しるさるるに非あらずや 30 レハベアムとヤラベアムの間あひだに戰爭いくさありき 31 レハベアム其その父󠄃祖せんぞと偕ともに寢ねむりて其その父󠄃祖せんぞと共ともにダビデの城󠄃まちに葬はうむらる其その母はゝのナアマといひてアンモニ人びとなり其その子こアビヤム之これに代かはりて王わうと爲なれり

第15章

1 ネバテの子こヤラベアム王わうの第だい十八年ねんにアビヤム、ユダの王わうとなり 2 エルサレムにて三年ねん世よを治をさめたり其その母はゝの名なはマアカといひてアブサロムの女むすめなり 3 彼かれは其その父󠄃ちゝが己おのれのさきに爲なしたる諸もろ〳〵の罪つみを行おこなひ其心そのこころ其その父󠄃ちゝダビデの心こゝろの如ごとく其その神かみヱホバに完全󠄃まつたからざりき 4 然しかるに其その神かみヱホバ、ダビデの爲ためにエルサレムに於おいて彼かれに一ひとつの燈明あかりを與あたへ其その子こを其その後あとに興おこしエルサレムを固かたく立たゝしめ賜たまへり 5 其そはダビデはヘテ人びとウリヤの事ことの外そとは一いつ生しやうの間あひだヱホバの目めに適󠄄かなふ事ことを爲なして其その己おのれに命めいじたまへる諸すべての事ことに背そむかざりければなり〘501㌻〙 6 レハベアムとヤラベアムの間なかには其その一いつ生しやうの間あひだ戰爭いくさありき

7 アビヤムの其その餘ほかの行爲わざと凡すべて其その爲なしたる事ことはユダの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずやアビヤムとヤラベアムの間あひだに戰爭いくさありき 8 アビヤム其その先祖せんぞと俱ともに寢ねむりしかば之これをダビデの城󠄃まちに葬はうむりぬ其その子こアサ之これに代かはりて王わうと爲なれり

9 イスラエルの王わうヤラベアムの第だい二十年ねんにアサ、ユダの王わうとなり 10 エルサレムにて四十一年ねん世よを治をさめたり其その母はゝの名なはマアカといひてアブサロムの女むすめなり
 653㌻ 
11 アサは其その父󠄃ちゝダビデの如ごとくヱホバの目めに適󠄄かなふ事ことを爲なし 12 男なん色しよくを行おこなふ者ものを國くにより逐󠄃おひ出いだし其その父󠄃祖せんぞ等たちの造󠄃つくりたる諸もろ〳〵の偶像󠄃ぐうざうを除のぞけり 13 彼かれは亦また其その母はゝマアカのアシラの像󠄃ざうを造󠄃つくりしがために之これを貶おとして太おほ后きさきたらしめざりき而しかしてアサ其その像󠄃ざうを毀こぼちてキデロンの谷たにに焚やき棄すてたり 14 但たゞし崇邱たかきところは除のぞかざりき然されどアサの心こゝろは一生いつしやうの間あひだヱホバに完全󠄃まつたかりき 15 彼かれ其その父󠄃ちゝの献納󠄃をさめたる物ものと己おのれのをさめたる物もの金銀きんぎんの器うつはをヱホバの家いへに携たづさへいりぬ

16 アサとイスラエルの王わうバアシヤの間なかに一生いつしやうの間あひだ戰爭いくさありき 17 イスラエルの王わうバアシヤ、ユダに攻せめ上のぼりユダの王わうアサの所󠄃ところに誰たれをも往󠄃來ゆききせざらしめん爲ためにラマを築きづけり 18 是こゝに於おいてアサ王わうヱホバの家いへの府庫くらと王わうの家いへの府庫くらに殘のこれる所󠄃ところの金銀きんぎんを盡こと〴〵く將とりて之これを其その臣僕しもべの手てに付わたし之これをダマスコに住󠄃すめるスリアの王わうヘジヨンの子こタブリモンの子こなるベネハダデに遣󠄃つかはして言いひけるは 19 わが父󠄃ちゝと爾なんぢの父󠄃ちゝの間あひだの如ごとく我われと爾なんぢの間あひだに約やくを立たてん視みよ我われ爾なんぢに金銀きんぎんの禮物おくりものを餽おくれり往󠄃ゆきて爾なんぢとイスラエルの王わうバアシヤとの約やくを破やぶり彼かれをして我われを離はなれて上のぼらしめよ 20 ベネハダデ、アサ王わうに聽ききて自己おのれの軍勢ぐんぜいの長かしら等たちを遣󠄃つかはしてイスラエルの諸邑まち〳〵を攻せめイヨンとダンとアベルベテマアカおよびキンネレテの全󠄃地ぜんちとナフタリの全󠄃地ぜんちとを擊うてり 21 バアシヤ聞きゝ及およびラマを築きづくことを罷やめてテルザに止とゞまり 22 是こゝに於おいてアサ王わう令れいをユダ全󠄃國ぜんこくに降󠄄くだしたり一人ひとりも免まぬかれし者ものなし斯かくして即すなはちバアシヤが用もちひてラマを築きづきたる石いしと材木ざいもくを取とりきたらしめアサ王わう之これを用もちてべニヤミンのゲバとミズパを築きづけり

23 アサの其その餘ほかの行爲わざと其その諸すべての功業いさをと凡すべて其その爲なしたる事ことおよび其その建󠄄たてたる城󠄃邑まちはユダの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや但たゞし彼かれは年とし老おゆるに及およびて其その足あしを病やみたり 24 アサ其その父󠄃祖せんぞと偕ともに寢ねむりて其その父󠄃ちゝダビデの城󠄃まちに其その父󠄃祖せんぞと偕ともに葬はうむらる其その子こヨシヤパテ之これに代かはりて王わうと爲なれり〘502㌻〙
 654㌻ 

25 ユダの王わうアサの第だい二年ねんにヤラベアムの子こナダブ、イスラエルの王わうと爲なり二年ねんイスラエルを治をさめたり 26 彼かれヱホバの目めのまへに惡あくを爲なし其その父󠄃ちゝの道󠄃みちに步行あゆみ其そのイスラエルに犯をかさせたる罪つみを行おこなへり 27 爰こゝにイツサカルの家いへのアヒヤの子こバアシヤ彼かれに敵てきして黨たうを結むすびペリシテ人びとに屬ぞくするギベトンにて彼かれを擊うてり其そはナダブとイスラエル皆みなギベトンを圍󠄃かこみ居ゐたればなり 28 ユダの王わうアサの第だい三年ねんにバアシヤ彼かれを殺ころし彼かれに代かはりて王わうとなれり 29 バアシヤ王わうとなれる時ときヤラベアムの全󠄃家ぜんかを擊うち氣息いきある者ものは一人ひとりもヤラベアムに殘のこさずして盡こと〴〵く之これを滅ほろぼせりヱホバの其その僕しもべシロ人びとアヒヤに由よりて言いひたまへる言ことばの如ごとし 30 是こはヤラベアムが犯をかし又󠄂またイスラエルに犯をかさせたる罪つみの爲ため又󠄂また彼かれがイスラエルの神かみヱホバの怒いかりを惹ひき起󠄃おこしたる事ことに因よるなり

31 ナダブの其その餘ほかの行爲わざと凡すべて其その爲なしたる事ことはイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや 32 アサとイスラエルの王わうバアシヤの間なかに一いつ生しやうのあひだ戰爭いくさありき

33 ユダの王わうアサの第だい三年ねんにアヒヤの子こバアシヤ、テルザに於おいてイスラエルの全󠄃地ぜんちの王わうとなりて二十四年ねんを經へたり 34 彼かれヱホバの目めのまへに惡あくを爲なしヤラベアムの道󠄃みちにあゆみ其そのイスラエルに犯をかさせたる罪つみを行おこなへり

第16章

1 爰こゝにヱホバの言ことばハナニの子こヱヒウに臨のぞみバアシヤを責せめて曰いはく 2 我われ爾なんぢを塵ちりの中うちより擧あげて我民わがたみイスラエルの上うへに君きみとなしたるに爾なんぢはヤラベアムの道󠄃みちに步行あゆみわが民たみイスラエルに罪つみを犯をかさせて其その罪つみをもて我わが怒いかりを激おこしたり 3 されば我われバアシヤの後のちと其その家いへの後あとを除のぞき爾なんぢの家いへをしてネバテの子こヤラベアムの家いへの如ごとくならしむべし 4 バアシヤに屬ぞくする者ものの城󠄃邑まちに死しぬるをば犬いぬ之これを食󠄃くらひ彼かれに屬ぞくする者ものの野のに死しぬるをば天空󠄃そらの鳥とりこれを食󠄃くらはんと
 655㌻ 

5 バアシヤの其その餘ほかの行爲わざと其その爲なしたる事ことと其その功績いさをはイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや 6 バアシヤ其その父󠄃祖せんぞと俱ともに寢ねむりてテルザに葬はうむらる其その子こエラ之これに代かはりて王わうとなれり 7 ヱホバの言ことば亦またハナニの子こヱヒウに由よりて臨のぞみバアシヤと其その家いへを責せむ是こは彼かれがヱホバの目めのまへに諸もろ〳〵の惡事あくじを行おこなひ其その手ての所󠄃爲わざを以もてヱホバの怒いかりを激おこしてヤラベアムの家いへに傚ならひたるに緣より又󠄂また其そのナダブを殺ころしたるに緣よりてなり

8 ユダの王わうアサの第だい二十六年ねんにバアシヤの子こエラ、テルザに於おいてイスラエルの王わうとなりて二年ねんを經へたり〘503㌻〙 9 彼かれがテルザにありてテルザの宮殿いへの宰つかさアルザの家いへにおいて飮のみ醉ゑひたる時とき其その僕けらいジムリ戰車いくさぐるまの半󠄃なかばを督つかさどる者もの之これに敵てきして黨たうを結むすべり 10 即すなはちユダの王わうアサの第だい二十七年ねんにジムリ入いりて彼かれを擊うち彼かれを殺ころし彼かれにかはりて王わうとなれり 11 彼かれ王わうとなりて其その位くらゐに上のぼれる時ときバアシヤの全󠄃家ぜんかを殺ころし男子をとこは其その親しん族ぞくにもあれ朋友はういうにもあれ一人ひとりも之これに遺󠄃のこさゞりき 12 ジムリ斯かくバアシヤの全󠄃家ぜんかを滅ほろぼせりヱホバが預言者よげんしやヱヒウに由よりてバアシヤを責せめて言いひたまへる言ことばの如ごとし 13 是こはバアシヤの諸もろ〳〵の罪つみと其その子こエラの罪つみのためなり彼等かれらは罪つみを犯をかし又󠄂またイスラエルをして罪つみを犯をかし其その虛むなしき物ものを以もてイスラエルの神かみヱホバの怒いかりを激おこさしめたり 14 エラの其その餘ほかの行爲わざと凡すべて其その爲なしたる事ことはイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや

15 ユダの王わうアサの第だい二十七年ねんにジムリ、テルザにて七日なぬかの間あひだ王わうたりき民たみはペリシテ人びとに屬ぞくするギベトンに向むかひて陣ぢんどり居ゐたりしが 16 陣ぢんどれる民たみジムリは黨たうを結むすび亦また王わうを殺ころしたりと言いふを聞きけり是こゝに於おいてイスラエル皆みな其その日ひ陣ぢん營えいにて軍ぐんの長かしらオムリをイスラエルの王わうとなせり 17 オムリ乃すなはちイスラエルの衆ひと〴〵と偕ともにギベトンより上のぼりてテルザを圍󠄃かこめり
 656㌻ 
18 ジムリ其その邑まちの陷おちいるを見みて王わうの家いへの天てん守しゆに入いり王わうの家いへに火ひをかけて其その中うちに死しねり 19 是こは其その犯をかしたる罪つみによりてなり彼かれヱホバの目めのまへに惡あくを爲なしヤラベアムの道󠄃みちにあゆみヤラベアムがイスラエルに罪つみを犯をかさせて爲なしたるところの罪つみを行おこなひたり 20 ジムリの其その餘ほかの行爲わざと其そのなしたる徒と黨たうはイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや

21 其時そのときにイスラエルの民たみ二ふたつに分󠄃わかれ民たみの半󠄃なかばはギナラの子こテブニに從したがひて之これを王わうとなさんとし半󠄃なかばはオムリに從したがへり 22 オムリに從したがへる民たみギナテの子こテブニに從したがへる民たみに勝󠄃かちてテブニは死しにてオムリ王わうとなれり 23 ユダの王わうアサの第だい三十一年ねんにオムリ、イスラエルの王わうとなりて十二年ねんを經へたり彼かれテルザにて六年ねん王わうたりき 24 彼かれ銀ぎん二タラントを以もてセメルよりサマリア山やまを買かひ其その上うへに邑まちを建󠄄たて其その建󠄄たてたる邑まちの名なを其その山やまの故主もちぬしなりしセメルの名なに循したがひてサマリアと稱󠄄よべり 25 オムリ、ヱホバの目めのまへに惡あくを爲なし其その先さきに在ありし凡すべての者ものよりも惡あしき事ことを行おこなへり 26 彼かれはネバテの子こヤラベアムの凡すべての道󠄃みちにあゆみヤラベアムがイスラエルをして罪つみを犯をかし其その虛むなしき物ものを以もてイスラエルの神かみヱホバの怒いかりをおこさしめたる其その罪つみを行おこなへり〘504㌻〙 27 オムリの爲なしたる其その餘ほかの行爲わざと其そのなしたる功績いさをはイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや 28 オムリ其その父󠄃祖せんぞと偕ともに寢ねむりてサマリアに葬はうむらる其その子こアハブ之これに代かはりて王わうとなれり

29 ユダの王わうアサの第だい三十八年ねんにオムリの子こアハブ、イスラエルの王わうとなれりオムリの子こアハブ、サマリアに於おいて二十二年ねんイスラエルに王わうたりき 30 オムリの子こアハブは其その先さきに在ありし凡すべての者ものよりも多おほくヱホバの目めのまへに惡あくを爲なせり 31 彼かれはネバテの子こヤラベアムの罪つみを行おこなふ事ことを輕かろき事こととなせしがシドン人びとの王わうエテバアルの女むすめイゼベルを妻つまに娶めとり往󠄃ゆきてバアルに事つかへ之これを拜をがめり 32 彼かれ其そのサマリアに建󠄄たてたるバアルの家いへの中うちにバアルのために壇だんを築きづけり
 657㌻ 
33 アハブ又󠄂またアシラ像󠄃ざうを作つくれりアハブは其その先さきにありしイスラエルの諸すべての王わうよりも甚はなはだしくイスラエルの神かみヱホバの怒いかりを激おこすことを爲なせり 34 其その代よにベテル人びとヒエル、ヱリコを建󠄄たてたり彼かれ其その基もとゐを置すゆる時ときに長子うひごアビラムを喪うしなひ其その門もんを立たつる時ときに季子すゑのこセグブを喪うしなへりヌンの子こヨシユアによりてヱホバの言いひたまへるがごとし

第17章

1 ギレアデに居住󠄃とゞまれるテシベ人びとエリヤ、アハブに言いふ吾わが事つかふるイスララエルの神かみヱホバは活いくわが言ことばなき時ときは數󠄄すう年ねん雨あめ露つゆあらざるべしと 2 ヱホバの言ことば彼かれに臨のぞみて曰いはく 3 爾なんぢ此こゝより往󠄃ゆきて東ひがしに赴おもむきヨルダンの前󠄃まへにあるケリテ川がはに身みを匿かくせ 4 爾なんぢ其その川かはの水みづを飮のむべし我われ鴉󠄄からすに命めいじて彼處かしこにて爾なんぢを養󠄄やしなはしむと 5 彼かれ往󠄃ゆきてヱホバの言ことばの如ごとく爲なせり即すなはち往󠄃ゆきてヨルダンの前󠄃まへにあるケリテ川がはに住󠄃すめり 6 彼かれの所󠄃ところに鴉󠄄からす朝󠄃あしたにパンと肉󠄁にく亦また夕ゆふべにパンと肉󠄁にくを運󠄃はこべり彼かれは川かはに飮のめり 7 しかるに國くにに雨あめなかりければ數󠄄日すうじつの後のち其その川かは涸かれぬ

8 ヱホバの言ことば彼かれに臨のぞみて曰いはく 9 起󠄃たちてシドンに屬ぞくするザレバテに往󠄃ゆきて其處そこに住󠄃すめ視みよ我われ彼處かしこの嫠やもめ婦󠄃をんなに命めいじて爾なんぢを養󠄄やしなはしむと 10 彼かれ起󠄃たちてザレパテに往󠄃ゆきけるが邑まちの門もんに至いたれる時とき一人ひとりの嫠やもめ婦󠄃をんなの其處そこに薪たきゞを採󠄃ひろふを見みたり乃すなはち之これを呼よびて曰いひけるは請󠄃こふ器うつはに少許すこしの水みづを我われに携もち來きたりて我われに飮のませよと 11 彼かれ之これを携もちきたらんとて往󠄃ゆける時ときエリヤ彼かれを呼よびて言いひけるは請󠄃こふ爾なんぢの手てに一ひと口くちのパンを我われに取とりきたれと 12 彼かれいひけるは爾なんぢの神かみヱホバは活いく我われはパン無なし只たゞ桶おけに一握ひとつかみの粉󠄃こなと瓶びんに少許すこしの油あぶらあるのみ觀みよ我われは二ふたつの薪たきゞを採󠄃ひろふ我われいりてわれとわが子このために調󠄃理ととのへて之これをくらひて死しなんとす 13 エリヤ彼かれに言いふ懼おそるるなかれ往󠄃ゆきて汝なんぢがいへる如ごとくせよ但たゞし先まづ其それをもてわが爲ために小ちひさきパン一ひとつを作つくりて我われに携もちきたり其その後のち爾なんぢのためと爾なんぢの子このために作つくるべし〘505㌻〙 14 其そはヱホバの雨あめを地ちの面おもてに降󠄄くだしたまふ日ひまでは其その桶おけの粉󠄃こなは竭つきず其その瓶びんの油あぶらは絕たえずとイスラエルの神かみヱホバ言いひたまへばなりと 15 彼かれゆきてエリヤの言いへるごとくなし彼かれと其その家いへ及およびエリヤ久ひさしく食󠄃くらへり
 658㌻ 
16 ヱホバのエリヤに由よりて言いひたまひし言ことばのごとく桶おけの粉󠄃こなは竭つきず瓶びんの油あぶらは絕たえざりき

17 是等これらの事ことの後のち其その家いへの主母あるじなる婦󠄃をんなの子こ疾やまひに罹かかりしが其その病やまひ甚はなはだ劇はげしくして氣息いき其その中うちに絕たえて無なきに至いたれり 18 婦󠄃をんなエリアに言いひけるは神かみの人ひとよ汝なんぢなんぞ吾わが事ことに關渉たづさはるべけんや汝なんぢはわが罪つみを憶おもひ出いださしめんため又󠄂またわが子こを死しなしめんために我われに來きたれるか 19 エリヤ彼かれに爾なんぢの子こを我われに授わたせと言いひて之これを其その懷ふところより取とり之これを己おのれの居をる桜にかいに抱󠄃かかへのぼりて己おのれの牀とこに臥ふさしめ 20 ヱホバに呼よばはりていひけるは吾わが神かみヱホバよ爾なんぢは亦また吾わがともに宿やどる嫠やもめに菑わざはひをくだして其その子こを死しなしめたまふやと 21 而しかして三み度たび身みを伸のばして其その子この上うへに伏ふしヱホバに呼よばはりて言いふわが神かみヱホバ願ねがはくは此この子この魂たましひを中うちに歸かへらしめたまへと 22 ヱホバ、エリヤの聲こゑを聽きゝいれたまひしかば其その子この魂たましひ中うちにかへりて生いきたり 23 エリヤ乃すなはち其その子こを取とりて之これを桜にかいより家いへに携つれくだり其その母はゝに與わたしていひけるは視みよ爾なんぢの子こは生いくと 24 婦󠄃をんなエリヤにいひけるは此これに緣よりて我われは爾なんぢが神かみの人ひとにして爾なんぢの口くちにあるヱホバの言ことばは眞󠄃實まことなるを知しると

第18章

1 衆多おほくの日ひを經へたるのち第三年さんねんめにヱホバの言ことばエリヤに臨のぞみて曰いはく往󠄃ゆきて爾なんぢの身みをアハブに示しめせ我われ雨あめを地ちの面おもてに降󠄄くださんと 2 エリヤ其その身みをアハブに示しめさんとて往󠄃ゆけり時ときに饑󠄃饉ききんサマリアに甚はなはだしかりき 3 茲こゝにアハブ家宰いへづかさなるオバデヤを召めしたり 4 (オバデヤは大おほいにヱホバを畏かしこみたる者ものにてイゼベルがヱホバの預言者よげんしやを絕たちたる時ときにオバデヤ百ひやく人にんの預言者よげんしやを取とりて之これを五十人にんづつ洞穴󠄄ほらあなに匿かくしパンと水みづをもて之これを養󠄄やしなへり) 5 アハブ、オバデヤにいひけるは國くに中ちうの水みづの諸すべての源みなもとと諸すべての川かはに往󠄃ゆけ馬むまと騾らを生活いかしむる草くさを得うることあらん然しからば我儕われら牲畜けものを盡こと〴〵くは失うしなふに至いたらじと 6 彼等かれら巡󠄃めぐるべき地ちを二人ふたりに分󠄃わかちアハブは獨ひとりにて此この途󠄃みちに往󠄃ゆきオバデヤは獨ひとりにて彼かの途󠄃みちに往󠄃ゆけり

7 オバデヤ途󠄃みちにありし時とき觀みよエリヤ彼かれに遭󠄃あへり彼かれエリヤを識しりて伏ふして言いひけるは我われ主しゆエリヤ汝なんぢは此こゝに居ゐたまふや 8 エリヤ彼かれに言いひけるは然しかり往󠄃ゆきて汝なんぢの主しゆにエリヤは此こゝにありと吿つげよ 9 彼かれ言いひけるは我われ何なにの罪つみを犯をかしたれば汝なんぢ僕しもべをアハブの手てに付わたして我われを殺ころさしめんとする〘506㌻〙
 659㌻ 
10 汝なんぢの神かみヱホバは生いくわが主しゆの人ひとを遣󠄃つかはして汝なんぢを尋󠄃たづねざる民たみはなく國くにはなし若もしエリヤは在をらずといふ時ときは其その國くに其その民たみをして汝なんぢを見みずといふ誓ちかひを爲なさしめたり 11 汝なんぢ今いま言いふ往󠄃ゆきて汝なんぢの主しゆにエリヤは此こゝにありと吿つげよと 12 然されど我わが汝なんぢをはなれて往󠄃ゆくときヱホバの靈みたま我われしらざる處ところに汝なんぢを携たづさへゆかん我わが至いたりてアハブに吿つげて彼かれ汝なんぢを尋󠄃たづね獲えざる時ときは彼かれ我われを殺ころさん然さりながら僕しもべはわが幼少いとけなきよりヱホバを畏かしこむなり 13 イゼベルがヱホバの預言者よげんしやを殺ころしたる時ときに吾わがなしたる事こと即すなはち我わがヱホバの預言者よげんしやの中うち百ひやく人にんを五十人にんづつ洞穴󠄄ほらあなに匿かくしてパンと水みづを以もて之これを養󠄄やしなひし事ことは吾わが主しゆに聞きこえざりしや 14 しかるに今いま汝なんぢ言いふ往󠄃ゆきて汝なんぢの主しゆにエリヤは此こゝにありと吿つげよと然しからば彼かれ我われを殺ころすならん 15 エリヤいひけるは我わが事つかふる萬軍ばんぐんのヱホバは活いく我われは必かならず今日けふわが身みを彼かれに示しめすべしと

16 オバデヤ乃すなはち往󠄃ゆきてアハブに會あひ之これに吿つげければアハブはエリヤに會あはんとて往󠄃ゆききけるが 17 アハブ、エリヤを見みし時ときアハブ、エリヤに言いひけるは汝なんぢイスラエルを惱なやます者もの此こゝにをるか 18 彼かれ答こたへけるは我われはイスラエルを惱なやまさず但たゞ汝なんぢと汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへ之これを惱なやますなり即すなはち汝等なんぢらはヱホバの命令めいれいを棄すて且かつ汝なんぢはバアルに從したがひたり 19 されば人ひとを遣󠄃やりてイスラエルの諸すべての人ひとおよびバアルの預言者よげんしや四百ひやく五十人にん並ならびにアシラ像󠄃ざうの預言者よげんしや四百ひやく人にんイゼベルの席せきに食󠄃くらふ者ものをカルメル山ざんに集あつめて我われに詣いたらしめよと

20 是こゝにおいてアハブ、イスラエルの都すべての子孫ひと〴〵の中うちに人ひとを遣󠄃やり預言者よげんしやをカルメル山ざんに集あつめたり 21 時ときにエリヤ總󠄂すべての民たみに近󠄃ちかづきて言いひけるは汝等なんぢら何時いつまで二ふたつの物ものの間あひだにまよふやヱホバ若もし神かみならば之これに從したがへされどバアル若もし神かみならば之これに從したがへと民たみは一ひと言ことも彼かれに答こたへざりき 22 エリヤ民たみに言いひけるは惟たゞ我われ一人ひとり存のこりてヱホバの預言者よげんしやたり然されどバアルの預言者よげんしやは四百ひやく五十人にんあり 23 然されば二ふたつの犢こうしを我儕われらに與あたへよ彼等かれらは其その一ひとつの犢こうしを選󠄄えらみて之これを截きり剖さき薪たきゞの上うへに載のせせて火ひを縱はなたずに置おきべし我われも其その一ひとつの犢うしを調󠄃理ととのへ薪たきゞの上うへに載のせて火ひを縱はなたずに置おくべし
 660㌻ 
24 斯かくして汝等なんぢらは汝等なんぢらの神かみの名なを龥よべ我われはヱホバの名なを龥よばん而しかして火ひをもて應こたふる神かみを神かみと爲なすべしと民たみ皆みな答こたへて斯この言ことばは善よしと言いへり

25 エリヤ、バアルの預言者よげんしやに言いひけるは汝等なんぢらは多おほければ一ひとつの犢うしを選󠄄えらみて最初さきに調󠄃理ととのへ汝等なんぢらの神かみの名なを呼よぶべし但たゞし火ひを縱はなつなかれと 26 彼等かれら乃すなはち其その與あたへられたる犢うしを取とりて調󠄃理ととのへ朝󠄃あさより午ひるにいたるまでバアルの名なを龥よびてバアルよ我儕われらに應こたへたまへと言いへり然されど何なんの聲こゑもなく又󠄂また何なにの應こたふる者ものもなかりければ彼等かれらは其その造󠄃つくりたる壇だんのまはりに踴をどれり〘507㌻〙 27 日中ひるにおよびてエリヤ彼等かれらを嘲󠄂あざけりていひけるは大おほ聲ごゑをあげて呼よべ彼かれは神かみなればなり彼かれは默想かんがへをるか他處わきに行ゆきしか又󠄂または旅󠄃たびにあるか或あるひは假寐ねむりて醒おこさるべきかと 28 是こゝにおいて彼等かれらは大おほ聲ごゑに呼よばはり其その例さだめに循したがひて刀劍かたなと槍やりを以もて其その身みを傷きづつけ血ちを其その身みに流ながすに至いたれり 29 斯かくして午時ひるすぐるに至いたりしが彼等かれらなほ預言よげんを言いひて晩ばんの祭物そなへものを献さゝぐる時ときにまで及およべり然しかれども何なんの聲こゑもなく又󠄂また何なんの應こたふる者ものも无なく又󠄂また何なんの顧󠄃かへりみる者ものもなかりき

30 時ときにエリヤ都すべての民たみにむかひて我われに近󠄃ちかよれと言いひければ民たみ皆みな彼かれに近󠄃ちかよれり彼かれ乃すなはち破壞くづれたるヱホバの壇だんを修理つくろヘり 31 エリヤ、ヤコブの子等こらの支󠄂派󠄄わかれの數󠄄かずに循したがひて十二の石いしを取とれり(ヱホバの言ことば昔むかしヤコブに臨のぞみてイスラエルを汝なんぢの名なとすべしと言いへり) 32 彼かれ其その石いしにてヱホバの名なを以もて壇だんを築きづき壇だんの周󠄃圍󠄃まはりに種子たね二セヤを容いるべき溝󠄃みぞを作つくれり 33 又󠄂また薪たきゞを陳列ならべ犢うしを截きり剖さきて薪たきゞの上うへに載のせて言いひけるは四よつの桶おけに水みづを滿みてて燔祭はんさいと薪たきゞの上うへに沃そゝげ 34 又󠄂またいひけるは再ふたゝび之これを爲なせと再ふたゝびこれをなせしかば又󠄂また言いふ三次󠄄みたびこれを爲なせと三次󠄄みたびこれをなせり 35 水みづに壇だんの周󠄃廻まはりに流ながるまた溝󠄃みぞにも水みづをみたしたり 36 晩ばんの祭物そなへものを献さゝぐる時ときに及およばて預言者よげんしやエリヤ近󠄃ちかよりて言いひけるはアブラハム、イサク、イスラエルの神かみヱホバよ汝なんぢのイスラエルにおいて神かみなることおよび我わが汝なんぢの僕しもべにして汝なんぢの言ことばに循したがひて是等これらの諸すべての事ことを爲なせることを今日こんにち知しらしめたまへ
 661㌻ 
37 ヱホバよ我われに應こたへたまへ我われに應こたへたまへ此この民たみをして汝なんぢヱホバは神かみなることおよび汝なんぢは彼等かれらの心こゝろを飜ひるがへしたまふといふことを知しらしめたまへと 38 時ときにヱホバの火ひ降󠄄くだりて燔祭はんさいと薪たきゞと石いしと塵ちりとを焚やきつくせり亦また溝󠄃みぞの水みづを餂すひ涸からせり 39 民たみ皆みな見みて伏ふしていひけるはヱホバは神かみなりヱホバは神かみなり 40 エリヤ彼等かれらに言いひけるはバアルの預言者よげんしやを執とらへよ其その一人ひとりをも逃󠄄遁󠄅のがれしむる勿なかれと即すなはち之これを執とらへたればエリヤ之これをキシヨン川がはに曳ひき下くだりて彼處かしこに之これを殺ころせり

41 斯かくてエリヤ、アハブにいひけるは大おほ雨あめの聲おとあれば汝なんぢ上のぼりて食󠄃くひ飮のみすべしと 42 アハブ乃すなはち食󠄃くひ飮のみせんとて上のぼれり然されどエリヤはカルメルの嶺いただきに登のぼり地ちに伏ふして其その面かほを膝ひざの間あひだに容いれゐたりしが 43 其その少者わかものにいひけるは請󠄃こふ上のぼりて海うみの方かたを望󠄇のぞめと彼かれ上のぼり望󠄇のぞみて何なにもなしといひければ再ふたゝび往󠄃ゆけといひて遂󠄅つひに七なゝ次󠄄たびに及およべり〘508㌻〙 44 第七次󠄄ななたびめに及およびて彼かれいひけるは視みよ海うみより人ひとの手てのごとく微すこしの雲くも起󠄃おこるとエリヤいふ上のぼりてアハブに雨あめに阻とどめられざるやう車くるまを備ととのへて下くだりたまへと言いふべしと 45 驟󠄃にはかに雲くもと風かぜおこり霄漢そら黑くろくなりて大おほ雨あめありきアハブはヱズレルに乘のり往󠄃ゆけり 46 ヱホバの能力ちからエリヤに臨のぞみて彼かれ其その腰󠄃こしを束帶むすびヱズレルの入いり口くちまでアハブの前󠄃まへに趨はしりゆけり

第19章

1 アハブ、イゼベルにエリヤの凡すべて爲なしたる事こと及および其その如何いかに諸すべての預言者よげんしやを刀劍かたなにて殺ころしたるかを吿つげしかば 2 イゼベル使󠄃つかひをエリヤに遣󠄃つかはして言いひけるは神かみ等たち斯かくなし復また重かさねて斯かくなしたまへ我われ必かならず明日あくるひの今いま時分󠄃ごろ汝なんぢの命いのちを彼かの人々ひと〴〵の一人ひとりの生命いのちのごとくせんと 3 かれ恐おそれて起󠄃たち其その生命いのちのために逃󠄄にげ往󠄃ゆきてユダに屬ぞくするベエルシバに至いたり少者わかものを其處そこに遺󠄃のこして 4 自みづから一いち日にち程󠄃ぢほど曠野あらのに入いり往󠄃ゆきて金雀花えにしだの下もとに坐ざし其その身みの死しなんことを求もとめていふヱホバよ足たれり今いまわが生命いのちを取とりたまへ我われはわが父󠄃祖せんぞよりも善よきにはあらざるなりと 5 彼かれ金雀花えにしだの下もとに伏ふして寢ねむりしが天てんの使󠄃つかひ彼かれに捫さはり興おきて食󠄃くらへと言いひければ
 662㌻ 
6 彼かれ見みしに其その頭あたまの側そばに炭󠄃すみに燒やきたるパンと一いち瓶びんの水みづありき乃すなはち食󠄃くらひ飮のみて復また偃󠄂臥ふしたり 7 ヱホバの使󠄃者つかひ復また再ふたゝび來きたりて彼かれに捫さはりていひけるは興おきて食󠄃くらへ其そは途󠄃みち長ながくして汝なんぢ勝󠄃たふべからざればなりと 8 彼かれ興おきて食󠄃くらひ且かつ飮のみ其その食󠄃しよくの力ちからに仗よりて四十日にち四十夜や行ゆきて神かみの山やまホレブに至いたる

9 彼處かしこにて彼かれ洞穴󠄄ほらあなに入いりて其處そこに宿やどりしが主しゆの言ことば彼かれに臨のぞみて彼かれに言いひけるはエリヤよ汝なんぢ此こゝにて何なにを爲なすや 10 彼かれいふ我われは萬軍ばんぐんの神かみヱホバのために甚はなはだ熱心ねつしんなり其そはイスラエルの子孫ひと〴〵汝なんぢの契󠄅約けいやくを棄すて汝なんぢの壇だんを毀こぼち刀劍かたなを以もて汝なんぢの預言者よげんしやを殺ころしたればなり惟たゞ我われ一人ひとり存のこれるに彼等かれら我わが生命いのちを取とらんことを求もとむと 11 ヱホバ言いひたまひけるは出いでてヱホバの前󠄃まへに山やまの上うへに立たてと茲こゝにヱホバ過󠄃すぎゆきたまふにヱホバのまへに當あたりて大おほいなる强つよき風かぜ山やまを裂さき岩石いはを碎くだきしが風かぜの中うちにはヱホバ在いまさざりき風かぜの後のちに地ぢ震しんありしが地ぢ震しんの中うちにはヱホバ在いまさざりき 12 又󠄂また地ぢ震しんの後のちに火ひありしが火ひの中うちにはヱホバ在いまさざりき火ひの後のちに靜しづかなる細微ほそき聲こゑありき 13 エリヤ聞きゝて面かほを外套うはぎに蒙つゝみ出いでて洞穴󠄄ほらあなの口くちに立たちけるに聲こゑありて彼かれに臨のぞみエリヤよ汝なんぢ此こゝにて何なにをなすやといふ 14 かれいふ我われは萬軍ばんぐんの神かみヱホバの爲ために甚はなはだ熱心ねつしんなり其そはイスラエルの子孫ひと〴〵汝なんぢの契󠄅約けいやくを棄すて汝なんぢの壇だんを毀こぼち刀劍かたなを以もて汝なんぢの預言者よげんしやを殺ころしたればなり惟たゞ我われ一人ひとり存のこれるに彼等かれら我わが生命いのちを取とらんことを求もとむと〘509㌻〙

15 ヱホバかれに言いひたまひけるは往󠄃ゆきて汝なんぢの途󠄃みちに返󠄄かへりダマスコの曠野あらのに至いたり往󠄃ゆきてハザエルに膏あぶらを沃そゝぎてスリアの王わうとなせ 16 又󠄂また汝なんぢニムシの子こエヒウに膏あぶらを注そゝぎてイスラエルの王わうとなすべし又󠄂またアベルメホラのシヤパテの子こエリシヤに膏あぶらをそそぎ爾なんぢに代かはりて預言者よげんしやとならしむべし 17 ハザエルの刀劍かたなを逃󠄄のがるる者ものをばエヒウ殺ころさんエヒウの刀劍かたなを逃󠄄のがるる者ものをばエリシヤ殺ころさん 18 又󠄂また我われイスラエルの中うちに七千せん人にんを遺󠄃のこさん皆みな其その膝ひざをバアルに跼かがめず其その口くちを之これに接つけざる者ものなりと
 663㌻ 

19 エリヤ彼處かしこよりゆきてシヤパテの子こエリシヤに遭󠄃あふ彼かれは十二軛くびきの牛うしを其その前󠄃まへに行ゆかしめて己おのれは其その第だい十二の牛うしと偕ともにありて耕󠄃たがへし居ゐたりエリヤ彼かれの所󠄃ところにわたりゆきて外套うはぎを其その上うへにかけたれば 20 牛うしを棄すててエリヤの後あとに趨はせゆきて言いひけるは請󠄃こふ我われをしてわが父󠄃母ちちははに接吻くちつけせしめよしかるのち我われ爾なんぢにしたがはんとエリヤかれに言いひけるは行ゆけ還󠄃かへれ我われ爾なんぢに何なにをなしたるやと 21 エリシヤ彼かれをはなれて還󠄃かへり一ひと軛くびきの牛うしをとりて之これをころし牛うしの器具󠄄うつはを焚たきて其その肉󠄁にくを煮にて民たみにあたへて食󠄃くらはしめ起󠄃たちて往󠄃ゆきエリヤに從したがひて之これに事つかへたり

第20章

1 スリアの王わうベネハダデ其その軍勢ぐんぜいを悉こと〴〵く集あつむ王わう三十二人にん彼かれと偕ともにあり又󠄂また馬むまと戰車いくさぐるまとあり乃すなはち上のぼりてサマリアを圍󠄃かこみ之これを攻せむ 2 彼かれ使󠄃つかひをイスラエルの王わうアハブに遣󠄃つかはし邑まちに至いたりて彼かれに言いはしめけるはベネハダデ斯かく言いふ 3 爾なんぢの金銀きんぎんは我われの所󠄃有󠄃ものなり亦また爾なんぢの妻つま等たちと爾なんぢの子等こらの美秀よき者ものは我われの所󠄃有󠄃ものなり 4 イスラエルの王わう答こたへて言いひけるは王わうわが主しゆよ爾なんぢの言ことばの如ごとく我われと我わが有󠄃もつ者ものは皆みな爾なんぢの所󠄃有󠄃ものなり 5 使󠄃者つかひ再ふたゝび來きたりて言いひけるはベネハダデ斯かく語かたりて言いふ我われ爾なんぢに爾なんぢ我われに爾なんぢの金銀きんぎん妻さい子しを付わたすべしと言遣󠄃いひおくれり 6 然されど明日あす今いま頃ごろ我わが僕しもべを爾なんぢに遣󠄃つかはさん彼等かれら爾なんぢの家いへと爾なんぢの臣僕けらいの家いへを探索さぐりて凡すべて爾なんぢの日ひに好このましく見みゆる者ものを其その手てに置いれて取とり去さるべしと

7 是こゝにおいてイスラエルの王わう國くにの長老としよりを皆みな召めして言いひけるは請󠄃こふ爾等なんぢら見みて此人このひとの害󠄅がいをなさんと求もとむるを知しれ彼かれ人ひとを我われに遣󠄃おくりて我わが妻さい子しとわが金銀きんぎんを索もとめたり而しかるに我われ之これを謝󠄃絕こばまざりしと 8 諸すべての長老としよりおよび民たみ皆みな彼かれに言いひけるは爾なんぢ聽きくなかれ許ゆるすなかれと 9 是故このゆえに彼かれベネハダデの使󠄃者つかひに言いひけるは王わうわが主しゆに吿つげよ爾なんぢが最初はじめに僕しもべに言いひつかはしたる事ことは皆みな我われ爲なすべし然されど比この事ことは我われ爲なすあたはずと使󠄃者つかひ往󠄃ゆきて反かへり命ごとをなせり 10 ベネハダデ彼かれに言いひつかはしけるは神かみ等たち我われに斯かくなし亦また重かさねて斯かくなしたまへサマリアの塵ちりは我われに從したがふ諸すべての民たみの手てに滿みつるに足たらざるべしと〘510㌻〙
 664㌻ 
11 イスラエルの王わう答こたへて帶おぶる者ものは解とく者ものの如ごとく誇ほこるべからずと吿つげよと言いへり 12 ベネハダデ天てん幕まくにありて王等わうたちと飮のみゐたりしが此事このことを聞きゝて其その臣僕けらいに言いひけるは爾等なんぢら陣列そなへを爲なせと即すなはち邑まちに向むかひて陣列そなへをなせり

13 時ときに一人ひとりの預言者よげんしやイスラエルの王わうアハブの許もとに至いたりて言いひけるはヱホバ斯かく言いひたまふ爾なんぢ此この諸すべての大軍たいぐんを見みるや視みよ我われ今日けふ之これを爾なんぢの手てに付わたさん爾なんぢは我わがヱホバなるを知しるにいたらんと 14 アハブ言いひけるは誰たれを以もてせんか彼かれいひけるはヱホバ斯かくいひたまふ諸省くに〴〵の牧伯つかさの少者わかものを以もてすべしアハブ言いふ誰たれか戰爭たたかひを始はじむべき彼かれ答こたへけるは爾なんぢなりと 15 アハブ乃すなはち諸省くに〴〵の牧伯つかさの少者わかものを核󠄂しらぶるに二百ひやく三十二人にんあり次󠄄つぎに凡すべての民たみ即すなはちイスラエルの凡すべての子孫ひと〴〵を核󠄂しらぶるに七千せん人にんあり

16 彼等かれら日中ひるごろ出いでたちたりしがベネハダデは天てん幕まくにて王等わうたち即すなはち己おのれを助たすくる三十二人にんの王等わうたちとともに飮のみて醉ゑひ居ゐたり 17 諸省くに〴〵の牧伯つかさの少者わかもの等ら先さきに出いでたりベネハダデ人びとを出いだすにサマリアより人衆ひと〴〵出いで來きたると彼かれに吿つげければ 18 彼かれ言いひけるは和睦わぼくのために出いで來きたるも之これを生擒いけどるべし又󠄂また戰爭たたかひのために出いで來きたるも之これを生擒いけどるべしと 19 諸省くに〴〵の牧伯つかさの是等これらの少者わかものおよび之これに從したがふ軍勢ぐんぜい邑まちより出いできたり 20 各おの〳〵其その敵手あひてを擊うち殺ころしければスリア人びと逃󠄄にげたりイスラエル之これを追󠄃おふスリアの王わうベネハダデは馬むまに乘のり騎兵きへいを從したがへて逃󠄄遁󠄅のがれたり 21 イスラエルの王わう出いでて馬むまと戰車いくさぐるまを擊うち又󠄂また大おほいにスリア人びとを擊うち殺ころせり

22 茲こゝに彼かの預言者よげんしやイスラエルの王わうの許もとに詣いたりて彼かれに言いひけるは往󠄃ゆきて爾なんぢの力ちからを養󠄄やしなひ爾なんぢの爲なすべき事ことを知しり辨わきまふべし年とし歸かへらばスリアの王わう爾なんぢに攻せめ上のぼるべければなりと 23 スリアの王わうの臣僕しもべ王わうに言いひけるは彼等かれらの神かみ等たちは山崗やまの神かみなるが故ゆゑに彼等かれらは我等われらよりも强つよかりしなり然されども我等われら若もし平󠄃地へいちに於おいて彼等かれらと戰たゝかはば必かならず彼等かれらよりも强つよかるべし 24 但たゞし此事このことを爲なせ即すなはち王等わうたちを除のぞきて各おの〳〵其その處ところを離はなれしめ方伯つかさを置おきて之これに代かふべし 25 又󠄂また爾なんぢの失うしなひたる軍勢ぐんぜいに均ひとしき軍勢ぐんぜいを爾なんぢのために備そなへ馬むまは馬むま戰車いくさぐるまは戰車いくさぐるまをもて補おぎなふべし斯かくして我儕われら平󠄃地へいちにおいて彼等かれらと戰たゝかはば必かならず彼等かれらよりも强つよかるべしと彼かれ其その言ことばを聽きゝいれて然しかなせり
 665㌻ 

26 年としかへるに及およびてベネハダデ、スリア人びとを核󠄂あつめてアペクに上のぼりイスラエルと戰たゝかはんとす 27 イスラエルの子孫ひと〴〵核󠄂あつめられ兵ひやう糧らうを受うけて彼等かれらに出いで會あはんとて往󠄃ゆけりイスラエルの子孫ひと〴〵は山羊やぎの二ふたつの小こ群むれの如ごとく彼等かれらの前󠄃まへに陣ぢんどりしがスリア人びとは其その地ちに充滿みちたり 28 時ときに神かみの人ひと至いたりてイスラエルの王わうに吿つげていひけるはヱホバ斯かく言いひたまふスリア人びとヱホバは山獄やまの神かみにして谿谷たにの神かみにあらずと言いふによりて我われ此この諸すべての大軍たいぐんを爾なんぢの手てに付わたすべし爾等なんぢらは我わがヱホバなるを知しるに至いたらんと〘511㌻〙 29 彼等かれら七日なぬか互たがひに相對あひむかひて陣ぢんどり第七日なぬかめにおよびて戰爭いくさを交󠄄接まじへしがイスラエルの子孫ひと〴〵一いち日にちにスリア人びとの步ほ兵へい十萬人まんにんを殺ころしければ 30 其その餘ほかの者ものはアベクに逃󠄄にぐて邑まちに入いりぬ然しかるに其その石垣いしがき崩󠄃くづれて其その存のこれる二萬まん七千せん人にんの上うへにたふれたりベネハダデは逃󠄄にげて邑まちにいたり奧おくの間まに入いりぬ

31 其その臣僕しもべ彼かれにいひけるは我儕われらイスラエルの家いへの王等わうたちは仁慈あはれみある王わうなりと聞きけり請󠄃こふ我儕われら粗麻󠄃布あさぬのを腰󠄃こしにつけ繩󠄂なはを頭くびにつけてイスラエルの王わうの所󠄃ところにいたらん彼かれ爾なんぢの命いのちを生いかしむることあらんと 32 斯かく彼等かれら粗麻󠄃布あさぬのを腰󠄃こしにまき繩󠄂なはを頭くびにまきてイスラエルの王わうの所󠄃ところにいたりていひけるは爾なんぢの僕しもべベネハダデ請󠄃こふ我わが生命いのちを生いかしめたまへと言いふとアハブいひけるは彼かれは尙なほ生いきをるや彼かれはわが兄弟きやうだいなりと 33 其その人々ひと〴〵これを吉兆󠄃しるしと爲なし速󠄃すみやかに彼かれの言ことばを承うけて爾なんぢの兄弟きやうだいベネハダデといへり彼かれ言いひけるは爾等なんぢらゆきて彼かれを導󠄃みちびききたるべしと是こゝにおいてベネハダデ彼かれの所󠄃ところに出いで來きたりしかば彼かれ之これを車くるまに登のぼらしめたり 34 ベネハダデ彼かれに言いひけるは我わが父󠄃ちゝの爾なんぢの父󠄃ちゝより取とりたる諸邑まち〳〵は我われ返󠄄かへすべし又󠄂また我わが父󠄃ちゝのサマリアに造󠄃つくりたる如ごとく爾なんぢダマスコに於おいて爾なんぢのために街衢まちを作つくるべしアハブ言いふ我われ此この契󠄅約けいやくを以もて爾なんぢを歸かへさんと斯かく彼かれと契󠄅約けいやくを爲なして彼かれを歸かへせり
 666㌻ 

35 爰こゝに預言者よげんしやの徒ともがらの一人ひとりヱホバの言ことばによりて其その同儕ともに請󠄃こふ我われを擊うてといひけるが其人そのひと彼かれを擊うつことを肯がへんぜざりしかば 36 彼かれ其人そのひとに言いふ汝なんぢヱホバの言ことばを聽きかざりしによりて視みよ汝なんぢの我われをはなれて往󠄃ゆく時とき獅子しゝ汝なんぢをころさんと其人そのひと彼かれの側そばを離はなれて往󠄃ゆきけるに獅子しゝ之これに遇󠄃あひて之これを殺ころせり 37 彼かれまた他ほかの人ひとに遭󠄃あひて請󠄃こふ我われを擊うてといひければ其人そのひと之これを擊うち擊うちて傷きずつけたり 38 預言よげん者しや往󠄃ゆきて王わうを途󠄃みちに待まち其その目めに掩巾おひをあてて儀容すがたを變かへゐたりしが 39 王わうの經過󠄃すぐる時とき王わうに呼よばはりていひけるは僕しもべ戰爭いくさの中なかに出いでしに人ひと轉かへりりて一箇ひとりの人ひとを我われの所󠄃ところに曳ひききたりて言いひけるは此人このひとを守まもれ若もし彼かれ失うせゆく事ことあらば汝なんぢの生命いのちを彼かれの生命いのちに代かふべし或あるひは爾なんぢ銀ぎん一タラントを出いだすべしと 40 而しかるに僕しもべ此彼ここかしこに事ことをなしゐたれば彼かれ遂󠄅つひに失うせたりとイスラエルの王わう彼かれにいひけるは爾なんぢの擬定さばきは然しかなるべし爾なんぢ之これを決さだめたり 41 彼かれ急󠄃いそぎて其その目めの掩巾おひを取とり除のけたればイスラエルの王わう彼かれが預言者よげんしやの一人ひとりなるを識しれり 42 彼かれ王わうに言いひけるはヱホバ斯かく言いひたまふ爾なんぢはわが殲滅ほろぼさんと定さだめたる人ひとを爾なんぢの手てより放はなちたれば爾なんぢの命いのちは彼かれの生命いのちに代かはり爾なんぢの民たみは彼かれの民たみに代かはるべしと〘512㌻〙 43 イスラエルの王わう憂うれへ且かつ怒いかりて其その家いへに赴おもむきサマリアに至いたれり

第21章

1 是等これらの事ことの後のちヱズレル人びとナボテ、ヱズレルに葡萄園ぶだうばたけを有󠄃もちゐたりしがサマリアの王わうアハブの殿みやの側そばに在ありければ 2 アハブ、ナボテに語かたりて言いひけるは爾なんぢの葡萄園ぶだうばたけは近󠄃ちかくわが家いへの側そばにあれば我われに與あたへて蔬菜󠄄あをものの圃はたけとなさしめよ我われ之これがために其そのよりも美よき葡萄園ぶだうばたけを爾なんぢに與あたへん若もし爾なんぢの心こゝろにかなはば其その價あたひを銀ぎんにて爾なんぢに予あたへんと 3 ナボテ、アハブに言いひけるはわが父󠄃祖せんぞの產業さんげふを爾なんぢに與あたふる事ことは決きはめて爲なすべからずヱホバ禁きんじたまふと 4 アハブはヱズレル人びとナボテの己おのれに言いひし言ことばのために憂うれひ且かつ怒いかりて其その家いへに入いりぬ其そは彼かれわが父󠄃祖せんぞの產業さんげふを爾なんぢに與あたへじと言いひたればなりアハブ床とこに臥ふし其その面かほを轉そむけて食󠄃しよくをなさざりき
 667㌻ 

5 其その妻つまイゼベル彼かれの處ところにいりて彼かれに言いひけるは爾なんぢの心こゝろ何なにを憂うれへて爾なんぢ食󠄃しよくを爲なさざるや 6 彼かれ之これに言いひけるは我われヱズレル人びとナボテに語かたりて爾なんぢの葡萄園ぶだうばたけを銀ぎんに易かへて我われに與あたへよ若もしまた爾なんぢ好このまば我われ其それに易かへて葡萄園ぶだうばたけを爾なんぢに與あたへんと彼かれに言いひたるに彼かれ答こたへて我わが葡萄園ぶだうばたけを爾なんぢに與あたへじと言いひたればなりと 7 其その妻つまイゼベル彼かれに言いひけるは爾なんぢ今いまイスラエルの國くにを治をさむることを爲なすや興おきて食󠄃しよくを爲なし爾なんぢの心こゝろを樂たのしましめよ我われヱズレル人びとナボテの葡萄園ぶだうばたけを爾なんぢに與あたへんと 8 彼かれアハブの名なをもて書ふみを書かき彼かれの印いんを捺おし其その邑まちにナボテとともに住󠄃すめる長老としよりと貴たふとき人ひとに其その書ふみをおくれり 9 彼かれ其その書ふみにしるして曰いふ斷食󠄃だんじきを宣傳ふれてナボテを民たみの中うちに高たかく坐ざせしめよ 10 又󠄂また邪󠄅よこしまなる人ひと二人ふたりを彼かれのまへに坐ざせしめ彼かれに對むかひて證あかしを爲なして爾なんぢ神かみと王わうを詛のろひたりと言いはしめよ斯かくして彼かれを曳ひき出いだし石いしにて擊うちて死しなしめよと

11 其その邑まちの人ひと即すなはち其その邑まちに住󠄃すめる長老としよりおよび貴たふとき人等ひとらイゼベルが己おのれに言いひつかはしたる如ごとく即すなはち彼かれが己おのれに遣󠄃おくりたる書ふみに書しるしたる如ごとく爲なせり 12 彼等かれら斷食󠄃だんじきを宣達󠄃ふれてナボテを民たみの中うちに高たかく坐ざせしめたり 13 時ときに二人ふたりの邪󠄅よこしまなる人ひと入いり來きたりて其その前󠄃まへに坐ざし其その邪󠄅よこしまなる人ひと民たみのまへにてナボテに對むかひて證あかしをなして言いふナボテ神かみと王わうを詛のろひたりと人衆ひと〴〵彼かれを邑まちの外そとに曳ひき出いだし石いしにて之これを擊うちて死しなしめたり 14 斯かくてイゼベルにナボテ擊うたれて死しにたりと言遣󠄃いひおくれり 15 イゼベル、ナボタの擊うたれて死しにたるを聞きゝしかばイゼベル、アハブに言いひけるは起󠄃たちて彼かのヱズレル人びとナボテが銀ぎんに易かへて爾なんぢに與あたへることを拒󠄃こばみし葡萄園ぶだうばたけを取とるべし其そはナボテは生いきをらず死しにたればなりと〘513㌻〙 16 アハブ、ナボテの死しにたるを聞きゝしかばアハブ起󠄃たちヱズレル人びとナボテの葡萄園ぶだうばたけを取とらんとて之これに下くだれり

17 時ときにヱホバの言ことばテシベ人びとエリヤに臨のぞみて曰いふ 18 起󠄃たちて下くだりサマリアにあるイスラエルの王わうアハブに會あふべし彼かれはナボテの葡萄園ぶだうばたけを取とらんとて彼處かしこに下くだりをるなり 19 爾なんぢ彼かれに吿つげて言いふべしヱホバ斯かく言いふ爾なんぢは殺ころし亦また取とりたるやと又󠄂また爾なんぢ彼かれに吿つげて言いふべしヱホバ斯かく言いふ犬いぬナボテの血ちを銛なめし處ところにて犬いぬ爾なんぢの身みの血ちを銛なむべしと
 668㌻ 
20 アハブ、エリヤに言いひけるは我わが敵てきよ爾なんぢ我われに遇󠄃あふや彼かれ言いふ我われ遇󠄃あふ爾なんぢヱホバの目めの前󠄃まへに惡あくを爲なす事ことに身みを委ゆだねしに緣より 21 我われ災害󠄅わざはひを爾なんぢに降󠄄くだし爾なんぢの後裔あとを除のぞきアハブに屬ぞくする男をとこはイスラエルにありて繋つながれたる者ものも繋つながれざる者ものも悉こと〴〵く絕たゝん 22 又󠄂また爾なんぢの家いへをネバテの子こヤラベアムの家いへの如ごとくなしアヒヤの子こバアシヤの家いへのごとくなすべし是こは爾なんぢ我われの怒いかりを惹起󠄃ひきおこしイスラエルをして罪つみを犯をかさせたるに因よりてなり 23 イゼベルに關ついてヱホバ亦また語かたりて言いひ給たまふ犬いぬヱズレルの濠ほりにてイゼベルを食󠄃くらはん 24 アハブに屬ぞくする者ものの邑まちに死しぬるをば犬いぬ之これを食󠄃くらひ野のに死しぬるをば天空󠄃そらの鳥とり之これを食󠄃くらはんと 25 誠󠄃まことにアハブの如ごとくヱホバの目めの前󠄃まへに惡あくをなす事ことに身みをゆだねし者ものはあらざりき其その妻つまイゼベル之これを慫憊󠄂すすめたるなり 26 彼かれはヱホバがイスラエルの子孫ひと〴〵のまへより逐󠄃おひ退󠄃しりぞけたまひしアモリ人びとの凡すべてなせし如ごとく偶像󠄃ぐうざうに從したがひて甚はなはだ惡にくむべき事ことを爲なせり

27 アハブ此これ等らの言ことばを聞きゝける時とき其その衣ころもを裂さき粗麻󠄃布あさぬのを體みにまとひ食󠄃しよくを斷たち粗麻󠄃布あさぬのに臥ふし遲󠄃々しづかに步行あゆめり 28 茲こゝにヱホバの言ことばテシベ人びとエリヤに臨のぞみて言いふ 29 爾なんぢアハブの我わが前󠄃まへに卑へり下くだるを見みるや彼かれわがまへに卑へり下くだるに緣よりて我われ災害󠄅わざはひを彼かれの世よに降󠄄くださずして其その子この世よに災害󠄅わざはひを彼かれの家いへに降󠄄くだすべし

第22章

1 スリアとイスラエルの間あひだに戰爭いくさなくして三年ねんを經へたり 2 第三年さんねんめにユダの王わうヨシヤパテ、イスラエルの王わうの所󠄃ところに降󠄄くだれり 3 イスラエルの王わう其その臣僕けらいに言いひけるはギレアデのラモテは我儕われらの所󠄃有󠄃ものなるを爾なんぢ等ら知しるや然しかるに我儕われらはスリアの王わうの手てより之これを取とることをせずして默もくしをるなり 4 彼かれヨシヤパテに言いひけるは爾なんぢ我われと共ともにギレアデのラモテに戰たゝかひにゆくやヨシヤパテ、イスラエルの王わうにいひけるは我われは爾なんぢのごとくわが民たみは爾なんぢの民たみの如ごとくわが馬むまは爾なんぢの馬むまの如ごとしと〘514㌻〙
 669㌻ 

5 ヨシヤパテ、イスラエルの王わうに言いひけるは請󠄃こふ今日けふヱホバの言ことばを問とへ 6 是こゝにおいてイスラエルの王わう預言よげん者しや四百ひやく人にん許ばかりを集あつめて之これに言いひけるは我われギレアデのラモテに戰たゝかひにゆくべきや又󠄂または罷やむべきや彼等かれら曰いひけるは上のぼるべし主しゆ之これを王わうの手てに付わたしたまふべしと 7 ヨシヤパテ曰いひけるは外ほかに我儕われらの由よりて問とふべきヱホバの預言者よげんしや此こゝにあらざるや 8 イスラエルの王わうヨシヤパテに言いひけるは外ほかにイムラの子こミカヤ一人ひとりあり之これに由よりてヱホバに問とふことを得えん然されど彼かれは我われに關ついて善事よきことを預言よげんせず唯たゞ惡事あしきことのみを預言よげんすれば我われ彼かれを惡にくむなりとヨシヤパテ曰いひけるは王わう然しか言いひたまふなかれと 9 是これによりてイスラエルの王わう一箇ひとりの官吏󠄄くわんりを呼よびてイムラの子こミカヤを急󠄃いそぎ來きたらしめよと言いへり 10 イスラエルの王わうおよびユダの王わうヨシヤパテ朝󠄃わうの衣ころもを著きてサマリアの門もんの入いり口くちの廣ひろ場ばに各おの〳〵其その位くらゐに坐ざしゐたり預言者よげんしやは皆みな其その前󠄃まへに預言よげんせり 11 ケナアナの子こゼデキヤ鐵てつの角つのを造󠄃つくりて言いひけるはヱホバ斯かく言いひ給たまふ爾なんぢ是等これらを以もてスリア人びとを抵觸つきて之これを盡つくすべしと 12 預言者よげんしや皆みな斯かく預言よげんして言いふギレアデのラモテに上のぼりて勝󠄃利かちを獲えたまへヱホバ之これを王わうの手てに付わたしたまふべしと

13 茲こゝにミカヤを召めさんとて往󠄃ゆきたる使󠄃者つかひ之これに語かたりて言いひけるは預言者よげんしや等たちの言ことば一ひとつの口くちの如ごとくにして王わうに善よし請󠄃こふ汝なんぢの言ことばを彼等かれらの一人ひとりの言ことばの如ごとくならしめて善事よきことを言いへと 14 ミカヤ曰いひけるはヱホバは生いくヱホバの我われに言いひたまふ事ことは我われ之これを言いはんと 15 かくて彼かれ王わうに至いたるに王わう彼かれに言いひけるはミカヤよ我儕われらギレアデのラモテに戰たゝかひに往󠄃ゆくべきや又󠄂または罷やむべきや彼かれ王わうに言いひけるは上のぼりて勝󠄃利かちを得えたまへヱホバ之これを王わうの手てに付わたしたまふべしと 16 王わう彼かれに言いひけるは我われ幾度いくたび汝なんぢを誓ちかはせたらば汝なんぢヱホバの名なを以もて唯たゞ眞󠄃實まことのみを我われに吿つぐるや 17 彼かれ言いひけるは我われイスラエルの皆みな牧者かふものなき羊ひつじのごとく山やまに散ちりをるを見みたるにヱホバ是等これらの者ものは主しゆなし各おの〳〵安然やすらかに其その家いへに歸かへるべしと言いひたまへりと 18 イスラエルの王わうヨシヤパテに言いひけるは我われ汝なんぢに彼かれは我われについて善よき事ことを預言よげんせず唯たゞ惡あしき事ことのみを預言よげんすと吿つげたるにあらずやと
 670㌻ 
19 ミカヤ言いひけるは然されば汝なんぢヱホバの言ことばを聽きくべし我われヱホバの其その位くらゐに坐ざしゐたまひて天てんの萬軍ばんぐんの其その傍かたはらに右左みぎひだりに立たつを見みたるに 20 ヱホバ言いひたまひけるは誰たれかアハブを誘いざなひて彼かれをしてギレアデのラモテに上のぼりて弊󠄃たふれしめんかと則すなはち一ひとりは此この如ごとくせんと言いひ一ひとりは彼かの如ごとくせんといへり 21 遂󠄅つひに一ひとつの靈れい進󠄃すゝみ出いでてヱホバの前󠄃まへに立たち我われ彼かれを誘いざなはんと言いひければ 22 ヱホバ彼かれに何なにを以もてするかと言いひたまふに我われ出いでて虛言いつはりを言いふ靈れいとなりて其その諸すべての預言者よげんしやの口くちにあらんと言いへりヱホバ言いひたまひけるは汝なんぢは誘いざなひ亦また之これを成󠄃なし遂󠄅とげん出いでて然しかなすべしと〘515㌻〙 23 故ゆゑに視みよヱホバ虛言いつはりを言いふ靈れいを爾なんぢの此この諸すべての預言者よげんしやの口くちに入いれたまへり又󠄂またヱホバ爾なんぢに關ついて災禍わざはひあらんことを言いひたまへりと

24 ケナアナの子こゼデキヤ近󠄃ちかよりてミカヤの頬ほうを批うちて言いひけるはヱホバの靈みたま何途󠄃いづくより我われを離はなれゆきて爾なんぢに語ものいふや 25 ミカヤいひけるは爾なんぢ奧おくの間まに入いりて身みを匿かくす日ひに見みるにいたらん 26 イスラエルの王わう言いひけるはミカヤを取とりて之これを邑まちの宰つかさアモンと王わうの子こヨアシに曳ひきかへりて言いふべし 27 王わう斯かく言いふ此これを牢ひとやに置いれて苦惱なやみのパンと苦惱なやみの水みづを以もて之これを養󠄄やしなひ我わが平󠄃安やすらかに來きたるを待まてと 28 ミカヤ言いひけるは爾なんぢ若もし眞󠄃まことに平󠄃安やすらかに歸かへるならばヱホバ我われによりて言いひたまはざりしならん又󠄂また曰いひけるは爾等なんぢら民たみよ皆みな聽きくべし

29 かくてイスラエルの王わうとユダの王わうヨシヤパテ、ギレアデのラモテに上のぼれり 30 イスラエルの王わうヨシヤパテに言いひけるは我われ裝すがたを改かへて戰陣たたかひの中なかに入いらん然されど爾なんぢは王わうの衣ころもを衣きるべしとイスラエルの王わう裝すがたを改かへて戰陣たたかひの中なかにいりぬ 31 スリアの王わう其その戰車いくさぐるまの長かしら三十二人にんに命めいじて言いひけるは爾等なんぢら小ちひさき者ものとも大おほいなる者ものとも戰たゝかふなかれ惟たゞイスラエルの王わうとのみ戰たゝかへと 32 戰いくさ車ぐるまの長かしら等たちヨシヤパテを見みて是これ必かならずイスラエルの王わうならんと言いひ身みをめぐらして之これと戰たゝかはんとしければヨシヤパテ號呼よばはれり 33 戰車いくさぐるまの長かしら彼かれがイスラエルの王わうにあらざるを見みしかば之これを追󠄃おふことをやめて返󠄄かへれり
 671㌻ 
34 茲こゝに一個ひとりの人ひと偶然なにごころなく弓ゆみを挽ひきてイスラエルの王わうの胸むね當あてと艸くさ摺ずりの間あひだを射󠄂いたりければ彼かれ其その御ぎよ者しやに言いひけるは我われ傷きずを受うけたれば爾なんぢの手てを旋めぐらして我われを軍中ぐんちうより出いだすべしと 35 是この日ひ戰爭いくさ嚴きびしくなりぬ王わうは車くるまの中うちに扶持たすけられて立たちスリア人びとに對むかひをりしが晩景ゆふべにいたりて死しにたり創きづの血ち車くるまの中うちに流ながる 36 日ひの沒いる頃ころ軍中ぐんちうに呼よばはりて曰いふあり各おの〳〵其その邑まちに各おの〳〵其その郷さとに歸かへるべしと

37 王わう死しにて携たづさへられてサマリアに至いたりたれば衆人ひと〴〵王わうをサマリアに葬はうむれり 38 又󠄂また其その車くるまをサマリアの池いけに濯󠄄あらひけるに犬いぬ其その血ちを舐なめたり又󠄂また遊󠄃女あそびめ其所󠄃そこに身みをあらへりヱホバの言いひたまへる言ことばの如ごとし 39 アハブの其その餘ほかの行爲わざと凡すべて其その爲なしたる事ことと其その建󠄄たてたる象牙󠄂ざうげの家いへと其その建󠄄たてたる諸すべての邑まちはイスラエルの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや 40 アハブ其その父󠄃祖せんぞと共ともに寢ねむりて其その子こアハジア之これにかはりて王わうとなれり〘516㌻〙

41 アサの子こヨシヤパテ、イスラエルの王わうアハブの第だい四よ年ねんにユダの王わうとなれり 42 ヨシヤパテ王わうとなりし時とき三十五歳さいなりしがエルサレムにおいて二十五年ねん王わうたりき其その母はゝの名なはアズバといひてシルヒの女むすめなり 43 ヨシヤパテ其その父󠄃ちゝアサの諸すべての道󠄃みちに步行あゆみ轉うつりて之これを離はなれずヱホバの目めに適󠄄かなふ事ことをなせり但たゞし崇邱たかきところは除のぞかざりき民たみ尙なほ崇邱たかきところに犧牲いけにへを献さゝげ香かうを焚たけり 44 ヨシヤパテ、イスラエルの王わうと和好よしみを結むすべり

45 ヨシヤパテの其その餘ほかの行爲わざと其そのなせる功績いさをおよび如何いかに戰爭いくさをなせしかはユダの王わうの歷代れきだい志しの書しよに記載しるさるるにあらずや 46 彼かれ其その父󠄃ちゝアサの世よに尙なほありし彼かの男なん色しよくを行おこなふ者ものの殘餘のこりを國くにの中うちより逐󠄃おひはらへり 47 當時そのころエドムには王わうなくして代だい官くわん王わうたりき 48 ヨシヤパテ、タルシシの船󠄄ふねを造󠄃つくりて金きんを取とるためにオフルに往󠄃ゆかしめんとしたりしが其その船󠄄ふねエジオンゲベルに壞やぶれたれば遂󠄅つひに往󠄃ゆくに至いたらざりき 49 是こゝにおいてアハブの子こアハジア、ヨシヤパテに言いひけるはわが僕しもべをして爾なんぢの僕しもべと偕ともに船󠄄ふねにて往󠄃ゆかしめよと然されどヨシヤパテ聽きかざりき
 672㌻ 
50 ヨシヤパテ其その父󠄃祖せんぞとともに寢ねむりて其その父󠄃ちゝダビデの城󠄃邑まちに其その父󠄃祖せんぞと共ともに葬はうむらる其その子こヨラム之これに代かはりて王わうとなれり

51 アハブの子こアハジア、ユダの王わうヨシヤパテの第だい十七年ねんにサマリアにてイスラエルの王わうとなり二年ねんイスラエルを治をさめたり 52 彼かれはヱホバの目めのまへに惡あくをなし其その父󠄃ちゝの道󠄃みちと其その母はゝの道󠄃みちおよび彼かのイスラエルに罪つみを犯をかさせたるネバテの子こヤラベアムの道󠄃みちに步行あゆみ 53 バアルに事つかへて之これを拜をがみイスラエルの神かみヱホバの怒いかりを激おこせり其その父󠄃ちゝの凡すべて行おこなへるがごとし〘517㌻〙
 673㌻